またしてもファンの予想を超える最高の舞台を見せてくれた。球史に残る驚天動地の偉業に、一段と大きな拍手を送りたい。

 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手が、マイアミで行われたマーリンズ戦で、メジャー史上初となる「50本塁打、50盗塁」を達成した。

 100年以上の歴史を持つ大リーグで前人未到の快挙だ。

 この試合で3本塁打、2盗塁をマークし、一気に記録を「51-51」に伸ばした。

 3打席連続本塁打を含む6安打、10打点の攻撃力で偉業を飾ると、「これだけ打てたことは人生でもない。自分が一番びっくりしている」と喜びを語った。

 50本塁打以上を打った打者で、25盗塁以上を記録した選手はいない。「50-50」は別格で、まさにスーパースターのなせる技だ。

 昨季まで投打の「二刀流」で活躍し、2年連続の「2桁勝利、2桁本塁打」を達成したが、今季は右肘手術の影響で開幕から指名打者(DH)に専念していた。

 持ち前の打力と発展途上の走力を磨き、6月から1番打者に定着すると「本塁打王の1番打者」「走れる指名打者」という新たな選手像を築き上げた。

 パワーがものをいう本塁打と、スピードが大事な盗塁は全く違い、二つの能力を高い水準で発揮するのは容易ではない。

 しかし常に「いい打席を一打席でも多く重ねたい」「積極的に次の塁を狙っていく姿勢をつくりたい」と語り、有言実行を貫いた。

 驚くのは、大谷選手にとって今季は、肩を休め、投手としての復帰を目指すシーズンであることだ。投げられないことで別の可能性を広げ、新たな金字塔を打ち立てたことには舌を巻く。

 3月の開幕直後に元通訳による違法賭博事件が発覚したが、そこでもプレーに影響させない精神力の強さを見せた。

 劇的な「50-50」達成とともに、メジャー7年目で自身初のプレーオフ進出も決めた。

 「勝つことが僕にとって一番大事なこと」と宣言し、エンゼルスから名門ドジャースに移籍したのはこのためだ。ワールドシリーズ制覇の夢をかなえてもらいたい。

 前人未到の記録でさえも、大谷選手の野球人生にとっては一つの通過点に過ぎないだろう。

 次はどんな快挙を成し遂げてくれるか。二刀流の復活と、さらなる活躍を楽しみにしたい。