現行制度による不都合をどう解消していくのか。議論を加速させる機会としてもらいたい。

 27日投開票の自民党総裁選で、夫婦が望めば結婚前の姓を使える選択的夫婦別姓制度導入の賛否が、争点の一つになっている。

 小泉進次郎元環境相は出馬会見で、「1年以内」の制度導入を目指すと掲げた。法案を国会に提出するとした上で、採決時は党内にも多様な意見があるとして党議拘束をかけないとした。

 河野太郎デジタル相も、制度を「認めた方がいい」とする。

 ただ、総裁選候補9人のうち、制度導入を明言したのは小泉氏と河野氏の2人にとどまる。

 背景には、自民支持層で賛否が割れていることがあるだろう。

 共同通信が9月に自民支持層を対象に行った電話調査では、制度の導入について反対が43・2%、賛成が41・4%とほぼ拮抗(きっこう)した。

 党員・党友による地方票の獲得が大事な総裁選では、態度を曖昧にしている候補は多い。

 石破茂元幹事長や林芳正官房長官、上川陽子外相は選択的夫婦別姓自体には理解を示すが、社会の分断の回避などのために議論を尽くすべきだとする。党や国民の意見集約が責務だとも訴える。

 茂木敏充幹事長は、世論の動向も踏まえるなどとして賛否を明らかにしていない。

 一方、保守的な支持層を強く意識する高市早苗経済安全保障担当相と小林鷹之前経済安保相、加藤勝信元官房長官は、旧姓の通称使用を拡大することで対応していくと主張している。

 別姓が家族の絆に与える影響などを懸念として挙げている。

 別姓を選んだ夫婦の子どもが名乗る姓の問題などの論点があることは確かだ。

 だが、懸念を強調するだけではなく、前向きに課題をクリアするための具体策を論じていく必要もあるはずだ。

 共同通信が全国の都道府県知事と市区町村長を対象に7~8月に実施したアンケートでは、選択的夫婦別姓を容認する回答が78%に上っている。

 夫婦同姓を義務付ける現行民法では、改姓するのはほとんどが妻で、容認と答えた首長は主に女性の不利益の解消を求めている。

 住民に近い立場の首長の声をしっかりと受け止めるべきだろう。

 選択的夫婦別姓を巡っては、1996年に法制審議会が制度を盛った民法改正要綱案を答申して国会に議論を促しており、ボールは国会側にある。しかし議論は長年、棚上げされている。

 きょう23日投開票の立憲民主党代表選では、4候補全員が早期導入を目指す考えを示している。

 日本のかじ取り役を目指す両党首選の候補者には、党の支持層だけでなく幅広い声に耳を傾け、議論を進める姿勢が求められる。