前代未聞のトラブルだ。一歩間違えれば惨事になり得る状況だった。鉄道事業者は安全第一を徹底し、再発を防がねばならない。
東北新幹線上りのはやぶさ・こまちで9月、宮城県内を走行中にはやぶさとこまちの連結が外れ、緊急停車するトラブルが起きた。
JR東日本によると、連結部が走行中に外れたのは初めてだ。非常ブレーキが自動でかかり、古川駅から約6キロ地点の高架上で緊急停車した。乗客約320人にけがはなかったという。
新幹線は時速315キロの高速運転中だった。脱線や追突などが発生せず、惨事には至らなかったとはいえ、二度とあってはならない事態だ。JR東の全社員が気を引き締め直す必要があるだろう。
2編成をつなげる連結器は「密着式」というタイプで、接続後、回転する錠を回すことでロックされる。解錠の操作をしない限り外れず、走行中に外れたことは一度もなかった。
JR東は、原因を調べた結果、運転台にある連結器を分離させるスイッチの裏側に製造過程で出たとみられる金属片があり、電気回路がショートして誤作動を引き起こしたとみている。
誤作動したのは2013年に導入した日立製作所製のE6系こまちで、他の同車種を全て点検すると、日立と川崎重工業(現川崎車両)が製造した計10編成で金属片が見つかり、除去したという。
なぜ金属片が残っていたのか。製造後10年以上たった今になって誤作動が起きたのはなぜか。JR東は両社と共に原因究明を進め、再発防止策を講じる必要がある。
問題となったスイッチ以外にも予期せぬ事態を引き起こす要因はないか、詳しく調べるべきだ。
鉄道を巡るトラブルが最近、相次いで発覚している。
JR東は中央線で8月、発車直後に列車の連結が分離し、運転士が手動で停止させていた。
JR東海では7月に東海道新幹線で保守用車が衝突、脱線し、一部区間が終日運休した。JR東の東海道貨物線では8月、保守用車同士が衝突し、作業員8人がけがをしたが、公表していなかった。
JR貨物は車輪に車軸を通す作業で、定められた基準値を超える圧力をかけていたのにデータを改ざんするなどの不正があり、全貨物列車の運行を一時停止した。
国土交通省は9月30日、多くの鉄道事業者が作業記録を改ざんした輪軸を使っていたと発表した。
圧力を強くかけて部品に傷が付いた場合、そのまま走行を続ければ、最悪脱線の可能性もある。
国は鉄道事業者に対する安全面の監督に万全を期してほしい。
日本の鉄道は先人の努力もあり、高速性や定時性、安全性を世界から高く評価されてきた。鉄道関係者は改めて、安全への重責を自覚してもらいたい。