暮らしに直結する物やサービスの値上げが止まらない。家計を圧迫するばかりだ。物価の上昇に賃金の上昇が追い付くよう、企業は引き続き努力してほしい。それを促す効果的な政策展開が、発足した新内閣には求められる。
値上げの波がこの10月も押し寄せている。63円だったはがきは85円と約3割上がり、住宅向け火災保険料も約1割引き上げられた。
特に目立つのは食品の値上げだ。帝国データバンクの調査では、10月に値上げが予定される食品は2911品目に上り、4月の2897品目を上回って今年最多となる見通しだ。
酒類・飲料が全体の半数近くを占め、ハムやソーセージなどの加工食品、調味料、菓子も多い。原材料高のほか、物流費や人件費の上昇、円安が値上げの要因だ。
食品値上げの動きは、新型コロナウイルス流行や円安などで食用油、小麦が上がった2021年秋に本格化し、4年目に突入した。
これまで安定していたコメ類も8月は全国消費者物価指数で前年同月比28・3%も上昇した。昨夏の猛暑などにより全国的に品薄となったためだが、新米が出た後も店頭では高止まりの傾向にある。
食品価格の上昇は日々の暮らしに直接、影響する。食費がかさみ、苦しい生活を強いられている世帯は多いことだろう。
物価が上がるなら賃金も上がる社会でなければならないが、そうなっていないことが問題だ。
今年の春闘は大企業を中心に大幅な賃上げが見られたものの、実質賃金は5月まで、過去最長の26カ月にわたってマイナスが続いた。6月にようやくプラスに転じ、7月も何とか維持したが、今後も継続するかは不透明だ。
一方で国内景気は回復が続き、企業業績は堅調だ。
日銀が1日に発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は大企業製造業の景況感が前回6月調査から横ばいで、大企業非製造業は2四半期ぶりに改善した。県内企業は2四半期連続の改善だ。
値上げによって収益力を回復させた企業も少なくない。業績を上げた企業には、利益を従業員に還元する努力が求められる。
石破茂氏が勝利した自民党総裁選後の東京株式市場は、増税や利上げへの警戒から急落した。1日に石破氏が首相に就き、岸田文雄前首相の経済政策を継承してデフレ脱却を重視する方針を示したことで、市場は落ち着きつつある。
物価高対策は最優先課題だ。生活防衛のため国民が節約に励み消費が縮小すれば、元のデフレ経済に戻りかねない。
石破氏は4日、家計支援策を含めた経済対策の策定を閣僚に指示する。賃上げが個人消費を拡大させ、それがさらに企業業績を向上させる好循環の実現を目指し、効果的な政策を打ち出してほしい。