そば処ふただ亭のもりそば天ぷら付き
そば処ふただ亭のもりそば天ぷら付き

 新潟県柏崎市西山地域の二田地区は、地元住民らが結成した「二田コミセンそば打ち同好会」を中心に、長年そば打ちが親しまれてきた。高齢化が進む中、同好会で腕を磨いた名人たちが営むそば店や、会員数を減らしながらも地域活動を展開する同好会が、そばで地域を盛り上げようと奮闘している。

 柏崎市西山町坂田の西山ふるさと公苑にある「そば処(どころ)ふただ亭」は、二田コミセンそば打ち同好会で技術を磨き、県が指定する「なりわいの匠(たくみ)」に認定された3人のそば打ち名人が2016年に開いた。本格的な十割そばや旬の野菜の天ぷらが安価で楽しめると、県内外のそば好きの間で評判となっている。

 営むのは、共同代表の岩下利実さん(75)、岩下強さん(79)、中澤重雄さん(79)。3人とも同好会の会員で、そば打ち歴は20年近い。培った技術を生かし、多くの人に本格的な手打ちそばを味わってもらうことで地域を盛り上げようと、ふるさと公苑にある直売所内にふただ亭を開いた。

 長野県産のそば粉を使用。朝6時半から1人ずつ順番に打ち、40人前ほどを仕込む。口に含んだ瞬間に広がるそばの香りと、歯切れ良い食感が特徴だ。

 中澤さんが「中途半端な味では、お客さんは来てくれない。そば打ちだけは絶対に手を抜かない」と語るこだわりぶりだが、もりそばは750円、天ぷら付きは900円とリーズナブル。「利益よりも、手打ちのおいしさをいろいろな人に知ってほしい」という3人の思いが込められている。

 こだわっているのはそばだけではない。魚介の風味が豊かなつゆは、岩下利実さんだけが調合できる味だ。6種類の魚介をブレンドし、うまみを効かせた。利実さんは「つゆの味が好きと言ってくれる常連さんが多い」と胸を張る。

 天ぷらは中澤さんが担当。自ら育てた野菜や地元で仕入れた食材を、米粉を混ぜた天ぷら粉でサクッと揚げる。春には3人で収穫した山菜の天ぷらも提供している。

 岩下強さん手製の小鉢も人気を集める。そばようかんや栗ようかん、季節の食材を使った漬物や煮物など、「何が付くかはその日のお楽しみ」という。

そば処ふただ亭を営む共同代表の3人。左から中澤重雄さん、岩下利実さん、岩下強さん=柏崎市西山町坂田

 開店以来、交流サイト(SNS)やグルメサイトの口コミで人気が広がり、...

残り757文字(全文:1665文字)