国民の政治への信頼を二度と裏切ることがないよう、政治にかかる資金の透明化を実現させねばならない。

 「政治とカネ」の問題は衆院選最大の争点だ。各党がいかにこのテーマに取り組むかが問われる。

 自民党派閥裏金事件を受けて、先の通常国会で改正された政治資金規正法は、「抜け穴」だらけとの批判が強い。共同通信が公示前に行った立候補予定者へのアンケート調査では93%が再改正が必要としていた。

 選挙戦で各党は具体的な改革案を示さねばならない。

 石破茂首相は公示後の第一声で「政治とカネの問題が二度とないよう深い反省の下にこの選挙に臨む」と述べた。

 とはいえ、政治制度改革を巡る自民の公約は、各党に比べて踏み込み不足なことは否めない。

 使途公開が不要な政策活動費は大きな論点で、立憲民主党や日本維新の会、国民民主党、れいわ新選組などの野党は公約で廃止を訴えている。

 しかし自民は「将来的な廃止も念頭に、透明性を確保し、監査する第三者機関を設置する」との方針にとどめている。

 これでは廃止するのか、はっきりしない。「将来的な」では、いつ廃止するかも分からず、有権者の判断材料になるとは言い難い。

 首相は9日の党首討論などで、今回の衆院選では政活費を「抑制的に使用する」と述べていたが、野党の批判などを受け、13日に一転して「衆院選では使わない」と明言した。発言がぶれることも、対応を分かりにくくしている。

 公明党は政活費廃止を公約にしており、与党での対応の違いも理解に苦しむ。

 企業・団体献金については、立民や維新、共産党、社民党などの野党が禁止を提唱する一方で、首相は従来「認めるべきだ」と主張し、自民は公約に触れていない。

 公約では「新設した総裁直属の政治改革本部を中心に不断の政治改革に取り組む」などとうたうものの、消極的な姿勢が目立っては、政治への信頼を取り戻す改革ができるだろうか。

 立民の野田佳彦代表は第一声で「自民に自浄能力がない」と述べ、自民の対応を批判した。

 こうした指摘に、首相はどう答えるのか。有権者が注目していることを忘れないでもらいたい。

 自民は小選挙区で、政治資金収支報告書に不記載だった前議員の比例代表への重複立候補を認めず、12人を非公認とした。

 ただ、当選すれば追加公認や役職に登用する考えで、選挙をみそぎとする思惑が透けている。

 裏金事件の究明をどう進めていくのかも、各党の主張をしっかり見極めたい。