耳当たりのいい言葉が並ぶが、実現可能性はどうなのか。各政党、候補は経済を好循環させる具体的な道筋を示し、財源を含めて論じてもらいたい。

 日本経済の大きな課題は、物価の上昇に賃金の上昇が追い付いていないことだ。毎月勤労統計調査によると、8月の実質賃金は3カ月ぶりにマイナスに沈んでいる。

 こうした状況を踏まえて多くの政党が打ち出しているのが最低賃金の引き上げだ。

 自民党は公約で「最低賃金の引き上げの加速」をうたう。石破茂首相は所信表明演説で、2020年代に全国平均の時給を1500円とする目標を示している。

 連立を組む公明党も5年以内に全国平均1500円達成を目指すとし、野党第1党の立憲民主党は1500円以上を掲げる。

 共産党は全国一律1500円以上、れいわ新選組と社民党は同1500円、国民民主党は同様に1150円以上とする。日本維新の会は最低賃金に触れていないが、規制改革による経済成長で給料を倍増させるという。

 労働者にとってはどれも歓迎すべきことだが、問題は企業がそれだけの給料を払えるかどうかだ。

 24年度の最低賃金は全国平均が1055円、本県は985円だ。時給1500円では「倒産する」との声が経営側からは漏れる。

 政治に問われるのは、十分な賃上げができるよう企業の成長を促す具体的な方策だ。

 各党はデジタル化やリスキリング(学び直し)、ライドシェアなどによる成長戦略を描くが、物足りない。選挙戦を通じて詳細を詰め、有権者に説明してほしい。

 各党は物価高対策として国民の生活支援策も提示している。

 自民は低所得者世帯への給付金支給、公明は給付金支給の他に電気・ガス料金、ガソリン代の補助延長を行うとする。

 立民は実質的に消費税の一部を還付する「給付付き税額控除」を中低所得者に導入するとした。

 他の野党は消費税減税を訴え、維新は8%、共産と国民は5%への引き下げを提唱する。れいわは廃止、社民は3年間ゼロとし、参政党も消費税減税を主張する。

 気がかりなのは、そうした施策を行うための財源と財政への影響だ。減税は個人消費を拡大させ経済活性化につなげる狙いもあるが、実現はそんなに簡単だろうか。社会保障政策などの財源の確保策も求められる。

 与党の給付金や補助に関しては、石破首相が衆院選後に経済対策を取りまとめ、13兆円超の補正予算を組む方針を示している。

 目先の選挙のためのばらまきで借金を増やし、将来につけを回すことにならないか。私たちはそうした点もしっかり吟味したい。