人口減に歯止めがかからず、本県など多くの地方が苦しんでいる。どう地方を守り、再生するのか。対策に関する論議に本腰を入れてもらいたい。

 衆院選では人口減対策、地方活性化が焦点の一つになっている。

 本県の人口はピークの1997年に249万人を超えていたが、近年は毎年約2万5千人の減少が続き、今月中に戦後初めて210万人を割り込むとみられる。

 一方、東京圏は「転入超過」が進み、一極集中は加速している。

 対策として2014年に政府は「地方創生」を打ち出し、地方移住の促進などに取り組んだ。

 政府は10年間の成果などを検証した結果、「人口減や一極集中の大きな流れを変えるには至っていない」と総括した。

 初代地方創生相を務めた石破茂首相は「もう一度原点に返る」と述べ、新しい地方経済・生活環境創生本部を創設した。今後の基本構想を策定するとしている。自治体への地方創生関連の交付金を当初予算ベースで倍増するという。

 人口減対策は一朝一夕で解決できる課題ではない。額の倍増ありきで終わらぬよう腰を据えた多角的な取り組みが必要だろう。

 地域活性化では、連立を組む公明党は公約で「住民や官民が協力した『活力ある地域づくり』を進める」と掲げている。

 野党第1党の立憲民主党は、公約に「権限や財源を可能な限り自治体に移譲させる地方分権を進める」と記した。ただ、どのように進めるのかは分かりにくい。

 日本維新の会は「地方の自立を実現する統治機構改革」を掲げ、分権型社会への転換を目指す。共産党は「地域経済の再生」を訴え、国民民主党は「新しい地方分権」を挙げる。他の野党も地域に目を向けた公約を並べている。

 与野党ともに、抽象的な掛け声にとどめず、より具体的に地方の将来像を語ってほしい。

 人口減は地方の暮らしに深刻な影響を与えている。

 本県では二大医療ネットワークの県立病院とJA県厚生連病院が経営危機に陥っている。県厚生連と県厚生連病院の立地自治体が県に財政支援を求めているが、県も財政難で厳しい状況にある。

 特にへき地の医療は構造的に不採算となりがちで、自助努力にも限界がある。

 公共交通網の維持も同様だ。全国的に乗客が減った地方の鉄道が災害を機に廃線となるケースがある。県内でもJR米坂線が22年の豪雨以降、復旧していない。過疎地ではバスの減便も相次ぐ。

 地方の人口減は国力の低下につながる。国として地方の生活基盤をどう支え、農林水産業や中小企業など地域経済の核をどう再生するか。議論の深化を期待したい。