東京電力福島第1原発事故の後、原発依存度を低減させるとした政府の方針が、原発を最大限利用していく方向に転換されてから、初の衆院選だ。
地球温暖化と脱炭素、エネルギーの安定供給が課題になる中、原発再稼働に焦点が当たっている。
一方、原発で過酷事故が起きれば、住民や地域に計り知れない影響を及ぼす。
東電柏崎刈羽原発が立地する本県には重要な課題の一つだ。各党の主張を比較し、1票を投じる際の参考にしたい。
脱炭素対策を巡っては、多くの党の公約は再生可能エネルギーの導入を進める点で一致する。
だが原発活用の是非には与野党を問わず、開きがある。
石破茂首相は所信表明演説で「安全を大前提とした原発の利活用」を明言し、原発回帰を進めた岸田文雄政権を踏襲した。公約にも「原子力の活用」を明記する。
野党の日本維新の会や国民民主党も推進の立場で、次世代型原発や新増設の推進をうたう。参政党は既存原発の活用に触れる。
これに対し、公明党は「将来的に原発に依存しない社会」を目指すとし、与党でも慎重だ。
立憲民主党は、新増設や実効性のある避難計画と地元合意がない再稼働は認めないとしている。
共産党と社民党は「原発ゼロ」を、れいわ新選組は原発即時廃止を掲げている。
いずれも方針を語るだけでなく、実現へのプロセスや将来的な原発の位置付けを明確にしてもらいたい。現実的な議論がなくては政策の是非を判断できない。
福島事故後に導入された「原則40年、最長60年」とする運転期間のルールは見直され、岸田政権で60年を超える運転を可能にする法改正に踏み込んだ。
国内で最も古い福井県の関西電力高浜原発1号機は、今年11月に運転開始50年となり、50年を超える運転が間もなく始まる。
今月末には、東日本大震災の被災地で初めて、宮城県の東北電力女川原発が再稼働を予定する。
再稼働や運転の長期化が進む半面、1月の能登半島地震で露呈した複合災害時の屋内退避など、避難の議論には課題が残る。立地県として気がかりだ。
先月には、柏崎刈羽原発の使用済み核燃料が、青森県むつ市の中間貯蔵施設に初めて搬入された。
しかし、最長50年の貯蔵終了後の搬出先となる再処理工場は未完成で、再処理の過程で出る「核のごみ」の最終処分場は、候補地も決まっていない。
多々ある課題を踏まえ、本年度中に改定するエネルギー基本計画に、原発政策をどう位置付けるか。各党には地域の疑問に答える論戦を求めたい。