原点という作品「甦る故郷」などの説明をする尾身伝吉さん=十日町市
原点という作品「甦る故郷」などの説明をする尾身伝吉さん=十日町市

 2004年に発生した中越地震2004年10月23日、新潟県中越地方を震源として発生した地震。旧川口町(現在の長岡市)で震度7、旧山古志村、旧小国町(いずれも現長岡市)、小千谷市で震度6強を観測した。新潟県や内閣府の資料によると、地震の影響で68人が亡くなり、4795人が重軽傷を負った。住宅の被害は計12万1604棟で、このうち全壊は3175棟、大規模半壊は2167棟、半壊は1万1643棟だった。の復興支援で始まった横浜市内の企画展に、出展し続けてきた作家がいる。自身も被災した新潟県十日町市の版画家、尾身伝吉さん(69)。被災当時は気がめいったが、「気にかけてくれる人がいるから」と創作を続け、送り出した作品は延べ500点を超えた。

 尾身さんは十日町高校卒業後、市内の織物業に勤務。着物のデザインの傍ら1982年に木版画を始め、失われつつあった故郷の原風景を描いてきた。2003年に同い年の幼なじみが急死した。「明日の保証はない。今始めなくては」と、会社を辞め版画家に専念した。

 中越地震はその翌年に起きた。長野県の展示会から車で帰る途中だった。市内に戻ると停電の...

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