中国が台湾周辺で大規模な軍事演習を行い、台湾有事への懸念が強まっている。朝鮮半島では韓国と北朝鮮の緊張が高まっている。

 日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す状況下で、平和と安全をどう守っていくのか。そのかじ取りが問われる衆院選だ。

 石破茂首相は自民党総裁選中、米国の核を日本で運用する「核共有」やアジア版NATO(北大西洋条約機構)構想を提唱していた。しかし、首相就任後は発言を控え、自民党公約にも盛り込まなかった。分かりにくい対応だ。

 岸田文雄前政権は2022年に国家安全保障戦略など安保関連3文書を策定し、反撃能力(敵基地攻撃能力)保有や防衛費の大幅増を決めた。

 自民公約はそれを継承し「安保3文書に基づく防衛力の抜本的強化」を掲げる。そのための防衛増税も、この選挙戦の争点だ。

 野党の立憲民主党は「防衛予算を精査し、防衛増税は行わない」とする。社民党は防衛力増強に反対の立場を鮮明にし、れいわ新選組は5年間で43兆円の「軍事費倍増計画」の中止をうたう。

 日本維新の会は「防衛費は国民の負担増に頼らず、国内総生産(GDP)比2%まで増額」を主張する。参政党は増税ではなく投資国債で賄うとする。

 ロシアと事実上の軍事同盟を結んだ北朝鮮は、ロシアの支援で核・ミサイル開発を進めている。中国も核弾頭保有数を急速に増やすなど核の脅威は高まっている。

 一方で、「核なき世界」を希求する潮流もあり、核廃絶を訴える日本原水爆被害者団体協議会はノーベル平和賞に決まった。

 米国の「核の傘」による抑止力を強化するのか、それとも核兵器禁止条約に参加し、核廃絶を目指すのかも注目される論点だ。

 自民は「核拡散防止条約(NPT)体制の維持強化など現実的かつ実践的な取り組みを進める」としている。公明党は核禁条約批准への環境整備を掲げ、与党内でも違いが生じている。

 立民は核禁条約へのオブザーバー参加、共産党は核禁条約への参加を主張する。

 維新は核共有を含む拡大抑止に関する議論を開始するとし、国民民主党は拡大抑止の実効性確保へ議論の必要性を訴える。

 ロシアのウクライナ侵攻や、パレスチナ自治区ガザでの戦闘は長引き、犠牲者は増えるばかりだ。

 国連は二つの戦闘を止めることができず、機能不全に陥っている。国際秩序が揺らぐ中、平和主義に基づく日本の外交力をどう発揮していくのか。

 北朝鮮による拉致被害者の全員救出は喫緊の課題だ。各党は具体的な手法を示してもらいたい。