価値観の多様化が広がっている。どんな生き方も尊重される共生社会を実現するには、何をどう変えたらいいのか。各党の主張に注目したい。

 衆院選の論点の一つになっている選択的夫婦別姓は、各党が制度にどう対応するかを、政権公約や政策集に掲げている。

 自民党総裁選でも焦点になり、石破茂首相は制度に前向きな態度だったが、首相就任後は「さらなる検討が必要だ」と後退した。

 党公約も「運用面で対応する形で一刻も早い不便解消に取り組む」とするだけで消極的だ。

 一方、連立を組む公明党や、野党の立憲民主党、共産党、国民民主党、れいわ新選組、社民党は制度導入を主張する。

 日本維新の会は、旧姓使用に法的効力を与える制度の創設を訴える。参政党は導入に反対する。

 法務省によると、夫婦同姓を義務づけるのは、日本だけだ。

 国連の女性差別撤廃委員会が今月、8年ぶりに行った日本政府への対面審査では、夫婦の9割以上が夫の姓を選ぶ現状を、委員が「社会的な圧力だ」と指摘した。

 婚姻後の姓を巡る議論は、1996年に法相の諮問機関である法制審議会が、選択的夫婦別姓を導入する民法改正を答申したが、保守系議員の反対で法案提出が見送られ、その後約30年間、たなざらしにされてきた。

 だが、今年5月の共同通信の世論調査では76%の人が選択的夫婦別姓に賛成し、6月には経団連が改姓の負担が女性に偏っているとして早期実現を提言している。

 国会は放置せず、衆院選後、早急に道筋を示すべきだ。

 同性婚への対応も注視される。石破首相はこれについても、総裁選で「(性的少数者が)不利益を受けているとすれば、救済する道を考えるべきだ」と発言しながら、首相就任後は実現を急がない姿勢に転換した。

 自民は公約で性的マイノリティーへの理解増進を図るとするが、同性婚には触れていない。

 野党の立民、維新、共産、れいわ、社民は賛成の立場だ。

 同性婚制度の導入による不利益や弊害はないという、札幌高裁が3月に示した司法判断もある。

 若者の関心が高いジェンダー政策に取り組むことは、若年層の政治意識を高める上でも重要だ。国会は議論を深めてもらいたい。

 多文化との共生も求められる。自民は公約でネット上の誹謗(ひぼう)中傷などへの対応、立民や維新、国民はヘイトスピーチ対策などをうたう。れいわは外国人の包括的な権利規定、立民や社民は包括的な差別禁止の法制化を盛る。

 行き過ぎた規制であってはならないが、差別を排除するために必要な手だてには知恵を絞りたい。