少数与党では安定した政権運営ができず、国政が停滞する恐れがある。国民生活に影響を来すことは断じてあってはならない。

 首相は、厳しい目が向けられていることを肝に銘じ、国民本位の政治を進めるべきだ。

 石破茂首相は衆院選翌日の会見で「国民から極めて厳しい審判をいただいた」としたものの、「現下の厳しい課題に取り組み国民生活や日本を守ることで、職責を果たす」と述べ、続投を表明した。

 課題は国内外に山積し、政治の空白が許されない中、自民党と公明党の連立与党は過半数割れし、野党と勢力が伯仲した。衆院で予算案や法案を通すには野党の賛同が不可欠だ。

 首相は「議席を大きく伸ばした党の主張を取り入れるべきは取り入れる」とした。しかし公明以外の連立の枠組み拡大については「今時点で想定しているわけではない」と述べた。

 政策ごとに連携する「部分連合」が念頭にあるとみられる。選挙で民意を得られなかった与党が、野党の協力を求めるのは当然だろう。国民のニーズをくみ取った政策の実行が不可欠だ。

 一方で、議論が停滞するなど国会が機能不全に陥る可能性も否定できない。国政安定へ首相は難しいかじ取りが迫られる。

 政策実行のため首相は、足元の党内の基盤も固めねばならない。しかし早速、大敗したことへの責任論が噴出している。

 惨敗を受けて小泉進次郎選対委員長が辞任した一方、トップである首相や森山裕幹事長は、何ら責任を取ってはいない。

 党内からは「退陣せずに、のうのうと続けるのは到底耐えられない」「進退を含めてしっかり考えるべきだ」といった批判が出ている。首相がこうした声をどう抑えていくかも焦点だ。

 連立を組む公明も大幅に議席を減らした。石井啓一代表自身も落選し「代表を続けることは困難を伴う」として辞任する見通しだ。

 衆院選の投票率は小選挙区で53・85%と、戦後3番目に低かった。派閥裏金事件による政治不信の高まりなどが影響したようだ。

 首相は会見で、「政治とカネ」の問題については、政策活動費の廃止や、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開と残金返納などを、速やかに実施すると表明した。

 先の通常国会で改正された政治資金規正法は抜け穴が多く「ザル法」と批判された。今度こそ、国民が納得できる改革をし、政治への信頼を取り戻さねばならない。

 物価高への対応や、災害復興など取り組むべき喫緊の課題は多い。日本を取り巻く安全保障環境も厳しさを増している。

 難局を乗り切るためにどう政権構想を描き、実現させるのか。首相の指導力が問われる。