「21世紀になっても、こんなことが…」。ロシアがウクライナに侵攻して以降、こうした嘆きが世界を包む。軍と無関係の民間施設が攻撃され、住民を虐殺した行為は戦争犯罪の疑いが濃い。70年以上前の第2次大戦下のような様相だ

▼独裁者スターリン時代のソ連を思わせる事態も起きている。ウクライナ東部などでは市民がロシア領内に強制移送されているという疑惑が浮上する。ウクライナ側によると、ロシアのシベリアやサハリン州に送られるらしい

▼連行された住民は「公的雇用」を提供され、出国が2年間禁じられるという。シベリアなどは経済発展が遅れ人口流出が続いており、移住させた人々を労働力として使う可能性が指摘される

▼スターリンは大戦中、チェチェン人やクリミア・タタール人など反抗的とみなした民族を中央アジアやシベリアに強制移住させた。当時と同じような構図の強制移住が21世紀に再現されてしまうのか

▼旧日本軍の兵士らが過酷な環境下で労働を強いられたシベリア抑留を思い起こす人もいるだろう。県人をはじめ多くの人が、帰国させると言われて列車に乗ったものの、行き先は極寒の地だったと証言している。ロシア側は、今回の動きを「自主的避難」と主張しているようだ

▼現代の戦争は、多くのメディアや交流サイト(SNS)を通じて世界中がその状況を目の当たりにする。兵器の進歩も著しいのだろう。しかし、戦争が引き起こす悲劇や残虐性は第2次大戦の当時と何ら変わらない。

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