武力で他国を侵略するという国際秩序を乱す行為に加担することは、断じて容認できない。戦闘がさらに長期化し、犠牲者が増え続けることは必至だ。

 北朝鮮が、ウクライナへ侵攻を続けるロシアに、自国の兵士を派遣したとみられる。

 韓国政府は、派兵は1万1千人以上の規模で、うち3千人以上がロシア西部の交戦地域付近に移動したとみている。少数の兵士がウクライナ国内に入っているとの報道もある。

 北朝鮮の国連大使は30日、国連安全保障理事会で、ロシアの主権と安全保障が脅かされた場合は「必要な決定を下す」と述べ、戦闘に参加する可能性を示唆した。

 ロシアと北朝鮮の緊密化が、如実に表れた形だ。

 6月にロシアのプーチン大統領が訪朝し、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記と、有事の相互支援規定を盛った「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。事実上の軍事同盟とみられている。

 ロシアでは、戦闘の長期化で死傷者が増大し、兵員不足が深刻になっている。ロシアの求めに、北朝鮮が応じた可能性がある。

 北朝鮮は、実戦経験を得ることで、軍事力向上につながる好機と判断したと考えられる。

 派兵されたのは、精鋭を誇る特殊部隊も含まれるとされるが、ウクライナ軍筋は、特殊部隊は100人に満たず、主力は歩兵や砲兵、工兵だとしている。

 専門家は、北朝鮮兵は後方支援ではなく突撃部隊になると指摘する。このため大量の犠牲者が出るリスクを抱える。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は「北朝鮮はわれわれと戦おうとしている。世界戦争への第一歩だ」と訴え、危機感を示した。

 国際社会は一刻も早く停戦へ導く方策を見つけねばならない。

 北東アジアの緊張が高まることも懸念される。

 北朝鮮が派兵の見返りに求めるのは、核やミサイル開発での軍事技術支援とみられる。

 北朝鮮は31日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行ったと発表した。ミサイルの飛行時間は約86分間で過去最長だったほか、到達高度も推定7千キロ超と過去最高だった。

 日本の防衛省はICBMは新型で固体燃料式と分析した。北朝鮮の技術力が向上しているようだ。

 韓国国防省は、北朝鮮が近く核実験を強行する可能性があるとの見方を示した。日本を含む周辺諸国への脅威が増していることに憂慮せざるを得ない。

 北朝鮮は、韓国を「敵国国家」とする憲法改正を行ったとされる。南北間を結ぶ道路や鉄道を破壊するなどして緊迫化している。

 緊張緩和へ、日本をはじめ国際社会のこれまで以上の外交努力が求められる。