「社会は厳しい所だ。学校とは違う。お前たちにはまだ分からないだろう」。40年近く前の小学6年生の時、担任が言った。どんな状況だったかは記憶が定かでない。今思えば言葉は乱暴だが、その表情はとても真剣だったことを覚えている
▼今春、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられた。18、19歳も一人でローンなどの契約を結ぶことができるが、親の同意がない契約を取り消せる「未成年者取り消し権」の対象から外れる。高校生も悪質業者の標的になる恐れが心配されている
▼アダルトビデオ(AV)出演を強要する恐れも高まるとして、政府は強要の手口を広報するなどの対策に乗りだす。モデルやアイドルに憧れる少女を勧誘し、AVに出演させるケースが報告されている。周囲に相談できず深い傷を抱える被害者は多い
▼高校では資産形成教育も始まる。株や投資信託など、教育の世界ではタブー視されてきた投機についても学ぶ。老後の資産づくりは自己責任で、といった時代を反映した取り組みでもある
▼10代は何かに夢中になったり、空想にふけったりできる特権的な年代だったように思う。学校の成績には結びつかない経験に、後になって助けられることもある。とはいえ時代の要請で現実に即した教育は増える傾向にある
▼行動に伴う責任を免れないのが大人だ。法的に大人として扱われる年齢が早まれば、社会の厳しさを知るまでの猶予期間は短くなる。当時はぴんと来なかった担任の言葉を今、反すうしている。