通勤や通学で使ったり、趣味で楽しんだりする人も多いだろう。気軽な乗り物だが、危険性があることを忘れてはならない。ルールをしっかり守り、自転車を安全に運転する意識を高めたい。

 自転車走行中の携帯電話使用(ながら運転)や酒気帯び運転に罰則を新設した改正道交法が今月、施行された。

 ながら運転は、走行中に携帯電話やスマートフォンなどを手に持って通話したり、画面を注視したりする行為を指す。自転車に取り付けたスマホの画面を注視することも、ながら運転に当たる。ただし、停車中は該当しない。

 ながら運転はこれまで県の公安委員会規則で禁止され、違反した場合は「5万円以下の罰金」だった。これが今月施行の改正道交法で「6月以下の懲役または10万円以下の罰金」に厳罰化された。

 事故を起こすなど実際に交通の危険を生じさせた場合はより重く、「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される。

 厳罰化の理由は、ながら運転による事故の増加だ。

 警察庁によると、2018~22年の5年間に全国で起きたながら運転の事故は454件で、その前の5年間より54%増えた。10代を中心に死亡したり、重傷を負ったりした人もいる。

 スマホのゲームや動画などの普及が要因の一つと考えられる。

 自転車に乗るときはスマホをしまう。使う必要があるなら、安全な場所に停車させてからにする。こうしたことを徹底したい。

 飲酒に絡む罰則も厳しくなった。これまでは正常な運転ができない状態の酒酔い運転だけが処罰対象だったが、酒気帯び運転も対象となった。「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」だ。

 酒気帯び運転をすると知りつつ酒類の提供をした場合も対象で、「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」となった。

 飲んだら乗るな、乗るなら飲むな。自転車も乗用車と同じと考えなければならない。自転車で来た客に安易に酒を出さないよう、店の側も注意が必要だ。

 県警や県、市町村は厳罰化について周知に努めてもらいたい。

 県内では23年、自転車事故が347件発生し、5人が死亡、333人がけがをしている。亡くなった5人のうち4人は70代だった。

 本県で特に問題となっているのは、ヘルメットをかぶる人が少ないことだ。着用は23年4月に努力義務化されたが、着用率は23年が2・4%で全国最下位、24年は8・0%で44位だった。

 23年に亡くなった5人のうち4人は着用していなかった。

 自転車は環境に優しく、健康にも良い乗り物だ。自分の身を守るためにも、また誰かを傷つけないためにも、ルールに従った正しい乗り方を確認したい。