歌舞伎や浄瑠璃の世界で、正念場は見どころの一つとされる。性根(しょうね)場ともいわれ、演者が役の性根(本心)を巧みに表現する。演目の中でも大事なシーンを指す
▼転じて、物事の真価が問われる、重要な局面のことも意味するようになった。さまざまな障壁をクリアし、どうやって状況を打開していくのか思い悩む。わが身を思い返しても、そんな場に身を置いたことが一再ならずある
▼国際交流の現場も正念場にある。中国や韓国との関係はぎくしゃくしたまま、改善の兆しが見えない。ロシアのウクライナ侵攻も追い打ちをかけた。新潟市の中原八一市長はロシアとの市民レベルの交流について「当面見合わせざるを得ない」と話した
▼新潟市はハバロフスクなどロシア極東3市と姉妹都市の関係にある。在日ウクライナ大使館からは関係を解消するよう要請されたが、市は今のところ現状を維持する意向を示している。しかし事の成り行き次第では予断を許さない
▼中国大連市の美術館が日中韓の銅鏡を集めたオンライン展覧会を開いた。本紙と友好関係にある現地紙の原稿で知った。記事には展覧会が3国の友好の架け橋になることを期待するとあった。殺伐としたニュースが連日流れているだけに心が和んだ
▼戦火の下にあるウクライナでは正念場が続く。残念ながら現時点で和平へのハードルは限りなく高い。一方、本県とロシアとはさまざまなレベルでつながりを深めてきた。逆風が吹く今こそ草の根交流の真価が問われている。