税金の無駄遣いの多さにがくぜんとする。野放図な補正予算の計上も目に余る。行政機関は国民の貴重な税金を扱う責任の重さを改めて胸に刻む必要がある。
会計検査院が官庁や政府出資法人を調べた2023年度の決算検査報告を公表した。
新型コロナウイルスと物価高騰の対策に関わる政策に重点を置いて検査した結果、税金の無駄遣いを指摘したり改善を求めたりしたのは全体で345件、総額約648億6千万円に上った。
法令違反や不適切な予算執行と認定した「不当事項」は計294件、約77億3千万円で、改善を求める「意見表示・処置要求」は計22件、約522億3千万円だ。
国の財政状況が厳しい中、公金の無駄遣いは決して許されない。指摘を受けた官庁や関係法人は猛省してもらいたい。
検査では補助金や助成金などに絡むずさんで悪質な事例も確認された。中小企業を支援する「IT導入補助金」で不正受給があったほか、従業員の職業訓練などに助成する「人材開発支援助成金」の不適切な支出もあった。
新型ウイルスやインフルエンザ対策のため、病床確保や発熱外来の態勢を整えるなどした医療機関への交付金では約21億9千万円分の過大交付が指摘された。医療機器の虚偽の納品書を提出して交付金を受け取ったケースもあった。
該当する省庁は原因をしっかり調べ、再発防止の仕組みを考えてほしい。ウイルス禍の非常時に緊急を要する事業もあったのかもしれないが、事後に効果をきちんと検証する作業も不可欠だ。
税金を食い物にするような事業者に厳しく対処する必要もある。
検査は国が補助金などを出した地方自治体の会計も対象となっており、本県では県と新潟市、三条市で計4件、約3332万円が過大交付で不当とされた。
算定方法の誤りや申請額の取り違いが原因だが、あってはならない。チェック体制などを再確認してもらいたい。
今回の検査では、22年度の国の補正予算約32兆7千億円が実際にどう使われたかも調査した。
その結果、補正予算が計上された1285項目のうち、355項目は補正で追加した分を上回る額が23年度に繰り返され、197項目は予算と同じ額が繰り越されていたことが分かった。
緊急性がなく、必要性の薄い多くの事業予算が補正計上されていたことになる。
石破茂首相は、13兆円超の大型の補正予算を編成する方針だ。
だが、政治主導による規模ありきの補正予算の在り方が、水膨れの要因の一つであることは明らかだ。政府は今回の検査院報告を真摯(しんし)に受け止め、効果的で効率的な事業の実施、予算の執行に努めなければならない。