合意に至ったとはいえ、途上国の不満が噴出する結果となったことは悔やまれる。地球温暖化を食い止めるため、温室効果ガスの排出大国は責任を持ち、取り組みを前進させなくてはならない。
国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)は、発展途上国の温暖化対策のため、先進国が2035年までに官民合わせて少なくとも年3千億ドル(約46兆4千億円)を支援するとの目標で合意し、閉幕した。
年1千億ドルとしていた現行目標の3倍の額となる。途上国の脱炭素化や災害対策を後押しするため、世界全体での支援を年1兆3千億ドル(約200兆円)に拡大させることも求めた。
しかし、先進国からの資金のみで年1兆3千億ドルの支援を求めていた途上国にとっては、要求と懸け離れた結果となり、憤りが渦巻く幕切れとなった。
途上国は、海面上昇や既に生じた異常気象に伴う災害復旧などで多額の資金を必要としている。
歴史的に大量の温室効果ガスを排出し、温暖化を招いてきた先進国に、責任に見合う拠出を求めたい途上国にとって、年3千億ドルは十分とは言えない額だろう。
パリ協定は、産業革命前からの気温上昇を1・5度以内に抑えることを目指しており、途上国は排出削減に役立つ再生可能エネルギーの導入などでも、巨額の資金を必要としている。
支援規模が大きければ、より高い削減目標を掲げる土台になるばかりでなく、激甚化する自然災害に備える元手にもなる。
技術や資金を持つ先進国が一層の努力を求められることは当然で、支援の拡充を検討していく必要があるだろう。
ただ米国のトランプ次期政権はパリ協定から離脱する見込みで、そうなれば一大拠出国が不在となる。日本はさらなる支援拡大を期待される可能性があり、先進各国との調整が不可欠だ。
今後は、各国が来年2月までに提出することになっている35年の温室効果ガス排出削減目標の内容が注目される。
日本は「13年度比60~66%減」を軸に検討を進めており、年内にも素案をまとめる。
一方、COP29の首脳級会合では、英国が「1990年比で81%削減」とする新目標を表明した。従来の78%から踏み込み、ハードルを上げた格好だ。
COP29に合わせ、欧州連合(EU)などは、温室効果ガス削減目標の強化に関する共同宣言と、排出削減対策が取られていない石炭火力発電所の新設をしないとする宣言をそれぞれ発表したが、日本はいずれも参加を見送った。
温暖化防止に後ろ向きな国だという印象が強まれば、日本の国際的な評価に関わる。政府には積極的な取り組みを求めたい。