衆院選で自民、公明両党が少数与党となって初の本格論戦が始まる。勢力の拮抗(きっこう)する与野党が活発に意見を交わし、合意形成を図る建設的な国会運営を期待したい。
石破茂内閣が発足して初となる臨時国会が28日、召集される。会期は12月21日までの24日間で、経済対策の裏付けとなる2024年度の一般会計補正予算案や、政治改革が焦点となる。
岸田文雄政権までの自民1強下では、政府提出法案や予算案は、与党の了承を得て国会に提出すれば「数の力」で採決まで進むため、国会提出前に事実上、成立が確定していた。
しかし石破政権は衆院で過半数を持たず、野党の協力が得られなければ成立できない。審議の過程で野党の要求を受け入れた修正を迫られることも想定される。
裏返せば、国会論戦がこれまでの形骸化から脱却し、本来あるべき姿を取り戻す好機である。
与党は、その場しのぎでなく、将来を見据えた責任ある政策を、国民に示してもらいたい。
野党は、少数与党の国会では自らの責任が増すことを自覚しなくてはならない。反対一辺倒ではなく具体的な提言を求めたい。
経済対策を巡っては、与党が野党の国民民主党を協議に取り込み、同党が主張した年収103万円を超えると所得税が生じる「103万円の壁」引き上げも対策に明記した。補正予算成立への足場を固めた形だ。
働く人の手取りを増やすなど経済を底上げし、物価高を克服する狙いで、13兆9千億円に上る補正予算案を計上した。低所得世帯向けの給付金や、いったん終了した電気・都市ガス料金の補助再開を盛り込んだ。
ただ23年度を上回る大型対策となり、歳出構造を平時に戻すとした経済財政運営の指針「骨太方針」と、大きく乖離(かいり)していることは見過ごせない。
財源が国債頼みとなれば財政健全化がまた遠のく。財政運営について、石破首相の説明と、与野党の真剣な論戦が不可欠だ。
政治改革は、政治資金規正法の年内再改正に向けた与野党の協議が注目される。
これまでに、政党から党幹部に渡される使途公開不要な政策活動費を廃止する方向性で一致したものの、政治資金を巡る使途公開の在り方は決着していない。
企業・団体献金の扱いは、立憲民主党など野党が禁止を要求しているのに対し、自民は反対の立場で、意見の隔たりが鮮明だ。政治資金の監査を強化する第三者機関についても相違がある。
自民派閥裏金事件に関し、臨時国会中に政治倫理審査会が再び開催される可能性もあるという。
今国会を、政治改革を着実に進める場とするために、与野党は結束して取り組まねばならない。