最初の大きなハードルは越えたと言っていいだろう。野党に譲歩を重ねた結果であり、少数与党による政権運営の難しさを改めて認識させることにもなった。

 石破茂政権にとって厳しい環境は変わらない。国民生活に悪影響を与えることがないよう、引き続き丁寧な対応が求められる。

 政府の経済対策の裏付けとなる2024年度補正予算案が12日の衆院本会議で可決され、衆院を通過した。自民、公明両党に加え、日本維新の会、国民民主党などが賛成した。

 参院は与党が多数を占めており、補正予算案は来週成立する見通しとなった。

 10月の衆院選で大敗し、少数与党に転じた石破内閣が初めて提出した補正予算案だ。成立させられるかどうかは、政権運営の行方を占う試金石とされていた。

 大きかったのは、国民民主の賛成を取り付けたことだ。

 国民民主が掲げる所得税の「年収103万円の壁」引き上げと、ガソリン税に上乗せされている暫定税率の廃止について、自民、公明、国民民主の3党幹事長は前日に合意にこぎ着けていた。

 看板政策の実現に強硬姿勢を崩さない国民民主に与党側が譲歩した形で、3党の「部分連合」が辛くも結実した格好でもある。

 維新とは、維新が重視する教育無償化を巡る実務者協議を始めることで合意した。

 自民は立憲民主党の主張を踏まえ、能登半島地震の被災地復興関連予算を1千億円増額する予算案の修正も行った。衆院での予算案の修正、可決は28年ぶりだ。

 長く続いた「自民1強」時代には見られなかった対応だ。野党の意見を入れながら政策を進める、あるべき国会の姿ともいえる。

 ただ野党の要求に与党が妥協する事例が目立ち、財源論が置き去りになっている側面は否めない。

 補正予算案の歳出総額は13兆9433億円に上る。物価高対策として低所得世帯向けの給付金や電気・ガス料金の補助などの経費を盛り込み、23年度を上回る大型補正となった。

 6兆6900億円の国債を発行して対応する計画だが、大量の国債増発は財政に打撃となる。それにもかかわらず、今国会で財政健全化を巡る議論が低調に見えるのは残念だ。

 石破政権には引き続き難題が待ち受けている。

 103万円の壁については、引き上げの具体的な方法や幅などは今後の協議に委ねられている。ガソリン税の暫定税率は廃止の時期が明確ではなく、なお先行きは見通せない。

 国内外に課題は山積している。国会の混乱が国政の停滞を招くようなことになってはならない。与党だけでなく、野党もこのことを忘れないでもらいたい。