「まほうのおまめ」という絵本がある。豆は植物の種だから、植えれば芽が出る。一方で種なのに食べられる。そんな豆が育ち、多様な食品に生まれ変わる様子を分かりやすく伝える内容だ

▼絵本を監修した料理家で、子どもたちに豆の栽培を勧める「大豆100粒運動」を提唱する辰巳芳子さんは後書きで、大豆について「有史以前から、日本人の食生活に密着した豆でありました」と書く

▼みそ、しょうゆ、豆腐に納豆…。和食に欠かせない食品は大豆が主原料だ。新潟県民にとっては枝豆の存在も忘れるわけにはいかない。なのに2019年度の自給率は重量ベースで6%に過ぎない

▼ロシアがウクライナに侵攻して以降、食料の安定確保に注目が集まる。ウクライナは小麦などの世界有数の供給国であり戦火が作物栽培に甚大な影響を与えるのは避けられない。市場では小麦価格が急騰している

▼18年度の日本の食料自給率はカロリーベースで37%。生きる糧の6割以上を海外に依存する。県などが発行した「にいがたの農林水産業」によれば、国産の食品だけで献立を作ると、例えばある日の夕食は、ごはん茶わん1杯、野菜の浅漬けと粉ふきいもが各1皿、焼き魚1切れ。焼き肉は15日に1皿、鶏卵に至っては34日に1個だ

▼本県の18年度の自給率は107%。農業県の面目躍如と胸を張りたいところだが、農業に携わる人や耕地面積は減少が続く。今の食生活をどう守るのか。ウクライナでの戦火に、こう問われた気がしている。

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