新しい年を迎えた。穏やかな1年となることを、多くの人が願っているだろう。

 誰もがぬくもりを感じられる、そんな年であってほしい。

 思い出すのは、1年前の今日のことだ。夕方、能登半島地震が発生した。新年ののどかさは消え、団らんが奪われた。

 平穏な日々は、当たり前にあるのではない。自然はいつどこで牙をむくか予測できない。

 被災した人々が落ち着いた生活を取り戻せるように、心を寄せ、支援を続けていきたい。

 何気ない毎日がいかに貴重か、身に染みて感じる出来事が世界各地で起きている。

 ◆戦後80年日本の使命

 ウクライナの戦火はなおやまず、パレスチナ自治区ガザの戦闘は中東の他の地域を巻き込んで続いてきた。

 人と人が命を奪い合う。戦争ほど愚かなものはない。理不尽な暴力は憎悪となり、争いは世代を超えて繰り返された。

 そうした中で、核廃絶を求め続ける日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が、ノーベル平和賞を受賞した意味は重い。

 被団協の代表委員で、2021年に96歳で他界した坪井直(すなお)さんは「ネバーギブアップ」が信条だった。「未来志向で、一緒に核廃絶へ手をつないでいきたい」と語っていた。

 核兵器は二度と使われてはならない。核による威嚇も許されない。人類を破滅に向かわせる戦争自体、あってはならない。

 終戦から80年の今年、唯一の戦争被爆国である日本は、そう世界に発信する使命がある。

 どんなに対立している国同士も、未来に目を向ければ、互いに平和を希求するだろう。

 負の連鎖を断ち切る。その一歩を踏み出さねばならない。政府には、核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を検討してもらいたい。

 日本は近年、軍事的圧力を強める中国や、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮を見据え、防衛力強化を進めている。抑止力となる一方で、近隣諸国との間に摩擦が生じる恐れもある。

 先の大戦を実体験として知る世代は減っているが、改めて証言に耳を澄ませ、深く考え、非戦の誓いを新たにしたい。

 ◆分断深めてはならぬ

 米国では間もなく、自国第一主義を掲げるトランプ前大統領が復権する。韓国では、日韓の関係改善をけん引した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が弾劾訴追され、足元が揺らいでいる。米韓両国で、対立と分断が広がっている。

 気がかりなのは、日本でも分断が広がりつつあることだ。

 交流サイト(SNS)に、他者への攻撃的な言動があふれている。SNSは強い情報の拡散力を持つ半面、負の感情を瞬く間に広める怖さがある。

 接した情報を冷静に受け止めねばならない。分断ではなく、考えが異なる人とも対話できる、寛容な社会を目指したい。

 国連の関連団体が発表した24年度の世界幸福度報告書で、日本の幸福度は、143カ国・地域のうち51位で、先進7カ国(G7)では最低だった。

 中でも30歳未満の若年層は73位と、全年齢層で最も低い。

 長い間、賃金が上がらず、男女格差は依然として残る。旧来の慣習やルールに縛られた社会の中で、生きづらさを抱えている人は少なくない。

 同性婚や選択的夫婦別姓は課題の一つだ。石破茂首相は先月、同性婚が実現すれば「日本全体の幸福度にとってプラスの影響を与える」と国会で述べた。

 議論を棚上げにしていては、失望が広がりかねない。誰もが幸福を感じられる社会の実現に向けて、手をつなぎ、歩みを進めていきたい。

 本県をはじめ地方の人口減少が著しい。少子化と、首都圏などへの人口流出が要因だ。

 若者が暮らし続けたいと思う地域でありたい。県民が誇りを持ち、日々の暮らしを楽しむことがその近道になるだろう。

 金山が世界文化遺産に登録された佐渡島(さど)や、海や山に恵まれた本県は、季節を問わず魅力にあふれる。食の豊かさは言うまでもない。地域の強みにしっかりと目を向けていきたい。