地震の被災から立ち上がろうとした矢先に、豪雨に見舞われた。能登半島地震の被災地はこの1年、苦難が続いた。
再建への道のりはまだ遠い。被災者に寄り添い、息の長い支援を続けていかねばならない。
石川県の能登半島を襲った最大震度7の地震から、1日で1年がたった。
建物の倒壊や火災、津波といった直接の被害で亡くなった人は228人を数えた。
元日の夕方という一年の中で最も心が安らぎ、くつろいでいる時に災害が襲った。帰省していて犠牲になった人もいた。被災した人たちの無念を思うと、今も切なさがこみ上げる。
◆関連死防がなくては
昨年9月の記録的豪雨で、重ねて被災した人もいる。
この1年間に、本県の4人を含む276人が関連死と認定された。さらに200人以上が関連死の審査を待っている。
直接死で亡くなった人数を上回る多くの人が、関連死で他界したことは残念でならない。被災者が精神的にも肉体的にも、過酷な環境に置かれてきたことを物語っているからだ。
災害で助かった命が、これ以上失われないように、国は全力で支援に取り組むべきだ。
石川県の集計によると、関連死の理由は「地震のショックや余震の恐怖」が最多で、「電気、水道などの途絶」「避難所生活」なども挙げられている。
劣悪な避難所環境や医療提供体制の不十分さを理由に、県は被災者を地元から離れた地域へ移す2次避難を進めた。最大5千人超が、能登から100キロ以上離れた県南部や隣県の宿泊施設に身を寄せた。
ただ、長距離移動で体調を悪化させた人がいたことは無視できない。病院や福祉施設間の搬送、悪路や長時間の移動が負担となり35人が死亡している。避難のあり方を検証したい。
避難所の環境改善に、政府は先月、自治体向け指針を改定し、トイレの数や1人当たりの面積などの数値目標を決めた。最低限の設備を定めた国際基準「スフィア基準」を反映した。
長年、環境の悪さを指摘されてきた日本の避難所が改善されることは、一歩前進だ。
とはいえ、自治体の対応能力には差がある。物流や食事提供などに知見がある民間との連携を視野に入れるなど、実効性を高める試みが必要だろう。
能登半島地震は今年、復旧、復興の正念場になる。
地震で倒壊した家屋など建物の公費解体は昨年11月末時点で1万棟を超えたものの、作業は豪雨などで遅れており、未解体の建物はなお約2万1千棟に上っている。
今冬の積雪状況によっては、廃棄物を円滑に搬出できず、撤去がさらに遅れる懸念がある。
共同通信が先月、石川県の被災者に行ったアンケートでは、復旧や復興が進んでいないと答えた人が63%に上っている。
解体撤去を着実に進め、住まいの再建やなりわいの再生につなげてもらいたい。医療機関の再建をはじめ、住民が安心できる環境整備が急務だ。
本県など過去の地震被災地の経験を共有し、過疎化と高齢化が同時に進む被災地の復興に生かしてもらいたい。
◆液状化対策に支援を
本県では新潟市西区で液状化被害が深刻だ。市は地域一帯での液状化対策の検討を進めているが、被災者には金銭的な負担への不安がある。
生活再建が軌道に乗るように、行政は被災者の立場に立った支援策を講じてほしい。
地震から11カ月がたとうとしていた昨年11月26日、能登半島の西方沖で最大震度5弱の地震が発生した。
元日とは別の断層が動いた誘発地震とみられる。大きな地震が数カ月置きに続いているといい、政府地震調査委員会の平田直(なおし)委員長は「これまでに経験のないことだ」と指摘している。
佐渡島周辺の活断層などでもひずみが大きくなり、地震が起きやすくなっているようだ。
警戒を怠らず、いざという時に慌てないように、身近な備えを確認しておきたい。