2025年、新潟県内では上越市など7市町村で首長選、6市町で議員選がそれぞれ予定されている。自治体の将来を託す市町村長選では、既に立候補を表明している新人がいる一方、多くの現職が進退を明らかにしていない。人口減少が加速し、地方の活力が失われつつある中、持続可能な地域に向けた針路をどのように描くのか。トップの手腕が問われることになる。各市町村長選の情勢、展望をまとめた。

◆[上越市]現職・中川幹太氏は態度示さず、対立候補模索の動きも

 立候補を表明している人はおらず、現職で1期目の中川幹太氏(49)も「目の前の市政課題に対応している。その先については考えが及ばない」と述べるにとどめている。他に出馬を模索する動きもあるが、構図は定まっていない。

 中川氏は、再挑戦した2021年の前回選で、副市長だった候補との一騎打ちを制して初当選した。「全国一を目指す」とうたった子育て支援や、イベントに頼らない通年観光など公約実現に取り組んでいる。

 「しがらみのない市政」を掲げる中川氏は議会との関係が構築できずにいる。目玉公約の「副市長4人制」は議会の理解が得られず任期中の実現を断念した。

 「失言癖」も溝を深める一因だ。24年7月には高卒者への不適切発言を巡り辞職勧告が決議された。24年9月には不信任決議案も出された。中川氏は「職責を果たしたい」と繰り返しており、政治行政関係者の間では「再選を目指すのは必至」との見方が支配的だ。

 一方、「市政の立て直しが必要」と意欲を見せているのが元市長で市議の宮越馨氏(83)だ。前回選で中川氏と政策協定を結び支援したが「協定が市政に反映されていない」として袂(たもと)を分かった。24年12月議会で不信任決議案の提出を模索するなど対決姿勢を強めている。

 中川氏と対立する保守系陣営も候補擁立を探る。具体的な作業は始まっておらず、関係者らは「春ごろから少しずつ動きだすのではないか」と見ている。

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◆[糸魚川市]現職・米田徹氏は立候補しない意向、新人同士の争いか

 現職で5期目の米田徹氏(75)は2024年末に6選不出馬の意向を固めた。前回市長選で米田氏を支援した自民党糸魚川支部などは、候補者選定の詰めの作業を進めている。市議1期目の新人伊藤麗氏(34)が出馬を正式表明。同市の元教員で新人の久保田郁夫氏(66)が無所属で立候補する見通しだ。

 米田氏は経営危機に陥ったJA県厚生連が運営する糸魚川総合病院への支援に力を注いできた。24年11月末の自身の後援会総会で「地域医療など大きな課題に向き合っており、しっかり話ができない」と進退を明言しなかったが、県などの財政支援にめどがついたことなどから不出馬の判断に至ったとみられる。

 伊藤氏は24年5月に出馬を表明。民間組織「人口戦略会議」が24年4月に公表した「消滅の可能性がある」自治体に糸魚川が加えられたことへの危機感などが立候補の主な理由だ。

 24年11月には重点施策を発表。教育・子育てや農林水産業の担い手支援などに力を入れるとした。伊藤氏は「地方政治に若者や女性の視点が欠けている。支援を広げていく活動を地道に行う」と語った。

 久保田氏は2021年の前回市長選にも出馬。5選を目指す米田氏との一騎打ちとなり1873票差で落選した。

 久保田氏は新潟日報社の取材に対し「選択と集中を意識したまちづくりをし、教育や医療、経済分野に力を入れたい」などと語った。1月8日に記者会見を開き、正式表明する予定だ。

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◆[十日町市]現職・関口芳史氏が5選目指すかが焦点、新人・樋口明弘氏は3回目の挑戦へ

 現職の関口芳史氏(65)が5期目を目指すかが、最大の焦点となっている。関口氏はこれまで態度を明らかにしていない。現時点で出馬を表明しているのは3回目の挑戦となる会社役員の新人樋口明弘氏(76)だけだ。

 関口氏は2009年の市長選で初当選し、13、17年はいずれも樋口氏を下した。前回21年は告示5日前に出馬表明した前市議の新人に大差をつけ、4選を果たした。

 関口氏は就任以来、行財政改革を推進。24年12月の市議会一般質問の答弁では、大地の芸術祭に伴う交流人口の増加や地域振興、定住・移住施策の成果などを強調した。

 樋口氏は24年4月に早々に出馬を表明。長く不動産業を経営するに当たって、十日町市内に商業施設などを誘致した手腕をアピールしている。

 公約には企業誘致による雇用の確保を掲げている。また、大地の芸術祭や地域おこし協力隊の見直しなどを挙げ、4期16年の関口市政に反対する立場を鮮明にしている。

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◆[胎内市]現職・井畑明彦氏「意思は確定していない」…3選立候補の行方は?

 現職の井畑明彦氏(63)が3選を目指すかが注目される。井畑氏は「現時点で意思は確定していない」と述べ、「市長はとても重責なので、市政にとって自分が本当にプラスの原動力になれるのか、自分自身に問いかけてしっかりと考えたい」と語った。

 井畑氏が1期目から誘致に力を入れてきた沖合での洋上風力発電事業は、村上市沖とともに促進区域に指定された。2029年の営業運転開始を目指し、25年春にも工事が始まる予定。生涯学習施設の整備などさまざまな課題もある。「(市政の)継続性は意識する要素になる」と話す。

 周辺では井畑氏が出馬するとの見方が強い。現段階で他に候補者擁立に向けた動きはないが、前回選は無投票だったため、市民からは「まちづくりを考えるために選挙が必要」との声も聞かれる。

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◆[見附市]現職・稲田亮氏は再選へ動くか?判断時期が焦点

 1期目の現職稲田亮氏(53)は2024年12月の定例記者会見で「任期にかかわらず、中長期的な視野を持った行政を進めていきたい」と述べており、再選を目指すかどうかの判断をいつするかが焦点となっている。

 元国土交通省官僚の稲田氏は、5期目の任期を1年余り残して辞職した久住時男氏の事実上の後継として、21年の前回選に立候補。元県職員との新人同士の一騎打ちを制し、初当選した。

 月1回のペースで市民との懇談会を開くなど、市民や職員の声を施策に反映させる「ボトムアップ型」の市政運営に一定の評価がある一方で、議会の一部からはリーダーシップが不足しているといった不満の声もある。財政の安定化に向けた歳入歳出の見直しなどでも課題を残しているが、現時点では他に目立った立候補の動きはない。

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◆[湯沢町]現職・田村正幸氏「目の前の課題が最優先」、4選への対応に注目

 3期目の現職田村正幸氏(73)は「目の前の課題に取り組むことが最優先」とし、4選に向けた対応が注目される。

 田村氏は「観光立町」を掲げ、スノーリゾートのPRを推進。ふるさと納税の寄付額は2023年度、過去最高の9億円を突破した。3歳以上の給食費を完全無償化した子育て政策、新幹線通勤など手厚い補助金を用意した移住定住政策に力を入れてきた。

 一方で24年6月に導入方針を示した宿泊税は、町内宿泊業者の反対意見が根強く、議会との足並みもそろっていない。東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に前向きな立場を取っており、疑問視する声もあるが、今のところ他に候補者を擁立するような動きはみられない。

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◆[関川村]現職・加藤弘氏、3選立候補への態度は保留

 現職の加藤弘氏(69)は3期目の出馬については態度を明らかにしていない。他の候補者擁立の目立った動きも現時点では見られない。

 県職員出身の加藤氏は2期続けて無投票で当選。今後については、2期目の公約に掲げた脱炭素施策や、防災無線機能を備えたタブレット端末の各戸配布事業などを挙げ「村民に見えるよう、形にしていかなくてはならない」と、残り1年の任期で注力する考えを示した。

 村議らからは、2022年に発生した県北豪雨での復旧対応や、国・県との関係構築について一定の評価の声が上がる。一方で、県北豪雨で被災したJR米坂線の復旧などの課題について、リーダーシップの発揮を求める向きもある。

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