癒着が長期にわたり、構造的に続いてきたことが明白になった。断絶に向けて両組織は体質改善を急ぎ、徹底的な意識改革に取り組むことが欠かせない。

 海上自衛隊の潜水艦修理契約に絡み、川崎重工業が架空取引で裏金を捻出し海自の乗員に物品を提供したとされる問題で、防衛省は実施していた特別防衛監察の中間報告を公表した。

 架空取引は遅くとも約40年前に始まり、額は2023年度までの6年間だけで計約17億円に上る実態が判明した。

 川重の工事担当者(工担)は、作業後に撤去されるため証拠が残らない養生材を取引先企業に大量発注したように装うなどして、裏金を捻出したという。

 取引先から納品された物品と、工担が発注した内容を突き合わせることもなく、過去に工担を経験した上司の決裁を素通りした。

 組織的な裏金づくりがまかり通っていた。あきれる事態だ。

 裏金の使途もあぜんとする内容だ。防寒着や雨具など業務に必要な物品にとどまらず、飲食接待や、乗員向けの家電製品、携帯用ゲーム機など、任務と無関係のものが含まれていた。

 乗員側から要望リストが渡され、中には乗員が自宅に配送を頼むケースもあった。

 川重側には、乗員との関係構築や、利益が出すぎて契約金額が下がらないように、原価をかさ増しする目的があったという。

 海自側は、防衛費が今より少なかった時代に、部隊から十分に物品が支給されず、川重側に頼ったことがきっかけになった。

 しかし、それぞれの主張は、不正行為を40年も続けてきたことの言い訳にもならない。川重、海自とも、国民の血税を使うことへの意識が著しく欠けている。

 不正が発覚せずにきた背景について、川重の橋本康彦社長は、潜水艦を修理する担当部署が人材の入れ替えが少ない「閉じた組織」だったことを挙げた。

 潜水艦の製造や修理は2社が独占しており、市場原理による競争が働かない。乗員と担当者のなれ合いが続けば、同じことが繰り返される懸念がある。

 双方の組織は、個人の問題と矮小(わいしょう)化せず、組織風土を変える改革に本気で取り組むべきだ。

 中間報告を昨年の仕事納めの日に公表した対応も疑問だ。

 直前に閉会した臨時国会で自衛官のなり手を増やすための処遇改善が議論されていたことから、公表の時期をずらしたという。

 自衛隊では昨年、潜水手当の不正受給をはじめ、信頼を揺るがす不祥事が相次いで表面化した。

 処遇改善は大事だが、そもそも、不正が相次ぐ組織に人材が集まるはずはない。

 防衛省・自衛隊は襟を正し、うみを出し切る必要がある。