子育てに王道はない。手探りを繰り返す毎日が、やがてわが家の子育てになっていく。パパたちが歩んできた「パパの細道」をのぞかせてもらう対談企画。2ndシーズンのテーマは、妊娠中のママと歩む「プレパパ期」。今回はどんな細道が待っているだろうか。

横田 孝優
コピーライター。10歳(男)・7歳(男)・7歳(女)の3児のパパ。企業理念の開発やホームページの文章制作などを手がけるほか、新潟日報asshにて2024年1月まで子育てコラムを連載。 https://ztdn.net/

©ALBIREX NIIGATA

島田 譲さん
アルビレックス新潟所属。茨城県水戸市出身。ポジションはミッドフィールダー。現在5歳の女の子のパパ。「燕市子育てサポーター」としても活動し、子煩悩なサッカー選手としても知られる。

もう全部大丈夫だから

横田 出産は立ち会えたんですか?

島田 できなかったんです。当時は長崎に住んでいたのですが、妻は岡山で里帰り出産しました。朝に陣痛が来たという連絡が来て、その日の練習が終わってからすぐに岡山に駆け付けました。夜まで一緒にいたんですが生まれず、僕が長崎に戻って朝の練習に向かっている時間に生まれました。

横田 その日を振り返って、奥さまは何かおっしゃっていますか?

島田 「本当に苦しいところは見ていないからね。次は絶対立ち会ってね」と言われます(笑)。

横田 やっぱり一番大変な時に一緒にいてほしかったんですね。

島田 テニスボールで腰を押すと楽になるとか、出産時にパパがすると良いことを事前に教わっていたんです。一緒にいる間はいろいろやったんですけど、妻には「もう全部大丈夫だから」と言われてしまって何もできませんでした。結局それも人によるんだなと学びました。

連携しながら、進めた準備

横田 奥さまが里帰りしている間、自宅では赤ちゃんを迎える準備を進めたのでしょうか?

島田 連絡を取りながらやりましたね。まだ買っていないものをそろえたりとか、子どもが生活しやすい環境を作ったりとか、細かく準備を進めていました。

横田 家具の扉にストッパーを付けたりとか?

島田 角にぶつかってけがをしないように、柔らかいクッションを付けたりしましたね。

横田 一人の時間にできるからはかどりそうですよね。すごく上手に連携されているなと感じました。

島田 書類関係は妻が準備を進めていたんですが、帰省先にあるのか、僕の方に残っているのか、そういう確認はよくしていました。「どっちにあるんだっけ?」みたいな。

横田 出生届は里帰り先でも出せるんですよね。どちらで出したんですか?

島田 生まれてすぐに岡山に行った後、ちょうど夏のオフがあって1週間くらい滞在したんですよ。その期間に提出しました。

2023年の夏、プライベートでも親交のある田上大地選手(2023シーズンまでアルビレックス新潟に在籍)の畑でジャガイモ掘りを体験。収穫作業に夢中になり、気付くと二人とも同じポーズになっていた
提供 アルビレックス新潟

特別感謝しない理由

横田 島田さんのプレパパぶりを振り返って、奥さまはどんなふうにおっしゃっていますか?

島田 うちの妻、あんまり褒めてくれないんですよ(笑)。出産に立ち会えなかったのは恨まれています。でも、奥さんが妊娠してから旦那さんが初めて家事をしようとすると大変じゃないですか。掃除も洗濯も料理も、僕は日頃からやっていたので苦じゃなかったんです。だからこそ、妻も特別感謝はしていないんだと思います。

横田 いつも通りだったということですか。そういった話はよく聞きますよね。妊娠してから突然家事を始めると結局できなくて、さらにつわりのしんどさも重なると余計にストレスでイライラする…みたいな。通常運転のままで妊娠期に入っていけるといいですよね。

島田 サッカーも一緒です。練習でできないことは、試合でもできない。日頃からやっておくに越したことはないと思います。

大切なものが増えた

横田 チームの練習があって出産には立ち会えなかったとおっしゃっていましたが、赤ちゃんにはその後すぐに会えたんですか?

島田 練習が終わってからすぐに、当時住んでいた長崎から、妻の実家がある岡山まで駆け付けました。

横田 その日の練習は気が気じゃないですね。

島田 あんなに集中できなかった練習は今までなかったですね(笑)。子どもの顔を初めて見て、「大切なものが増えたな」「この子を守っていかなきゃいけない」という実感が湧きました。

Jリーグ通算200試合出場達成セレモニーで、奥さまと娘さんから花束をもらう島田選手。ママに支えられながら小さな手で花束を渡してくれた娘さんの様子に思わず笑みがこぼれる
提供 アルビレックス新潟

横田 最後に、読者のプレパパたちに向けてアドバイスをお願いします。

島田 生まれてくる子どもや奥さんの状態によって必要なものは変わってくるので、全部はうまくいかないのが当たり前だと思ったほうがいいと思います。それなりに準備をしたうえで、柔軟に対応してほしいです。そして、子どもができたから家事をするのではなくて、普段からやっておけば、あえて頑張る必要もないんですよね。日頃から奥さんを大切にしてください。

(終わり)

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