米球界最高の栄誉を日本人、アジア人として初めて手にした。日本のみならず野球の本場米メジャーリーグでも数々の金字塔を打ち立てたスーパースターは誇りだ。大きな拍手を送りたい。
米国野球殿堂が今年の殿堂入りメンバーを発表し、マリナーズなどで通算3089安打を放ったイチローさんが、候補者1年目で選ばれた。走攻守の卓越した実績が評価された。
イチローさんは「この場にいられることは全く想像できなかった。大変光栄なこと」と述べた。野手では初となる満票には1票届かなかったが、「すごく良かったと思う。生きていく上で不完全だから進もうとできる」と語った。
現役引退後も向上心を持ち続けるイチローさんらしい。
渡米1年目の2001年に首位打者、盗塁王を獲得し、リーグMVPと新人王を同時受賞した。04年には年間最多安打を更新する262安打を達成した。
内野ゴロのような打球でも俊足で安打とした。守備は右翼から鋭い返球で走者を刺した。10年連続で年間200安打を達成し、ゴールドグラブ賞を受賞した。
過酷な日程で激しい競争にさらされる中、太く長く活躍した。才能に加え、数多くのルーティンを整然と遂行し、体調管理やオフの過ごし方にも気を配る努力を積み重ねてきたからに違いない。
30年前に投手の野茂英雄さんが日本人メジャーリーガーのパイオニアとなり、イチローさんが野手の道を切り開いた。そうした歩みが、現在の大谷翔平選手らの活躍につながったといえよう。
イチローさんは45歳の引退までに日米通算4367安打を放ち、日本の野球殿堂にも選ばれた。
渡米前のオリックスでは日本球界初の200本安打を記録し、7年連続で首位打者に輝いた。
球団の地元神戸が阪神大震災で傷ついた1995年、中心選手だったイチローさんらは「がんばろうKOBE」を掲げ、リーグ優勝を果たした。その頑張りは、被災者らの希望になった。
引退後のイチローさんは高校球児を指導している。高い技術と野球への姿勢は刺激になるだろう。
昨年の全国高校野球選手権大会では指導を受けた選手が宣誓し、「努力したとしても報われるとは限らない。しかし努力しなければ報われることはない」というイチローさんの言葉を盛り込んだ。
何かに挑もうとする一人一人がかみしめたい言葉だ。