感染がさらに広がれば、物価高に悩む消費者の食卓にも影響が及びかねない。早期発見し、感染を最小限に抑えたい。
養鶏業がしっかりと事業を継続できるように、国や自治体には生産現場に向けたさらなる支援策を検討してもらいたい。
高病原性鳥インフルエンザの感染拡大が、年明けから養鶏場などで加速している。
農林水産省によると、今季は昨年10月17日に、過去最も早く感染が確認され、今月24日までに14道県の43件に広がっている。県内でも昨年10月に上越市、11月に胎内市で発生した。
全国では24日までに、約811万羽が殺処分の対象になった。過去最多発生を記録した2022~23年を上回るペースという。27日にも感染が新たに疑われる事例が発生したと発表された。
周辺に広げないためには、早期発見と通報が欠かせない。生産現場には迅速な対応が求められる。
23年は生産量が大きく減って供給不足に陥り、鶏卵価格が大きく跳ね上がった。今回はこれまでに1割程度上昇している。今後の価格動向が気がかりだ。
感染拡大への対策として、国や自治体は、養鶏場内を複数の区域に分けて飼育する「分割管理」の導入を促している。
鳥インフルは1羽でも感染が確認されると、農場内の全ての鶏が殺処分の対象になるが、分割管理をしていれば、1区画で感染が起きたとしても、他の区画で発生しなければ、全数処分を回避できる可能性があるからだ。
農場内を柵などで仕切り、人や車両の出入り口や消毒場所を分けて管理する。堆肥舎や卵を集めるベルトといった設備も共用せず、作業員は区域ごとに専任する。
ただ、導入コストや作業員確保などの負担が大きく、費用対効果を疑問視する声もある。分割管理をしても、発生区画以外で発生しないとは限らず、多額の設備投資を伴う。導入をためらう生産現場の心境は理解できる。
県内で導入した2業者は、採卵農場へひなを出荷する種鶏農場で、以前から鶏舎間を離す対策を取っていたという。種鶏農場より規模や飼育数が大きい採卵農場では対策は広がっていない。
県は設備投資への補助率の引き上げなどを国に要望し、独自支援も検討するという。価格の優等生と言われる鶏卵の安定供給へ、十分な対策を講じてほしい。
23年に鳥インフルが確認され約130万羽を殺処分した村上市の養鶏場は、操業再開を断念し、昨年末で閉鎖した。今後の感染に備えた新たな埋却地を確保できなかったことが大きい。再開がかなわなかったことは残念だ。
感染リスクはどこにでもあることを踏まえた上で、生産現場を支える取り組みに力を入れたい。