インフラの老朽化は全国で急速に進む恐れがある。事は暮らしに影響し、人命にも関わる。国を挙げて点検や補修、更新に力を入れていかなければならない。
埼玉県八潮市で28日午前、県道交差点の道路が陥没し、2トントラックが転落する事故が起きた。
陥没でできた穴は徐々に拡大し、幅約40メートル、深さ最大15メートルになった。運転手とみられる男性の救助活動は難航している。一刻も早く救出されることを願う。
陥没の原因は、県道の地下約10メートルにある下水道管が破損したためとの見方が強い。
汚水が勢いよく流れ落ちて空気と触れることで発生した硫酸が管の一部を腐食させ、破損した部分に土砂が流入して地中に空洞ができた結果、陥没したとみられる。
下水道管は内径約4・7メートルもある大型の鉄筋コンクリート製で、40年以上前の1983年に供用が始まった。
埼玉県は陥没現場の管路を2021年ごろに点検しているが、一部損傷が見つかる程度で補修不要との判定だったという。
深刻なのは、同様の下水道管の老朽化が今後、全国で一斉に進む可能性が高いことだ。
国土交通省によると、一般的な耐用年数の50年を過ぎた下水道管は22年度末に3万キロだったが、32年度は9万キロ、42年度には20万キロになるという。
同省は下水道管の老朽化対策に取り組み、自治体に交付金を配るなどして修繕や更新を財政支援している。自治体の多くも計画的に対策を進めている。
しかし自治体側には財政面に加え、下水道事業に携わる技術職員の不足という問題も生じている。
下水道管が破損するとトイレや洗濯ができなくなるなど生活への影響が大きい。埼玉県は現場周辺の約200世帯に避難を呼びかけ、12市町の約120万人を対象に下水道の利用自粛を要請した。
通信ケーブルも損傷し、インターネットや固定電話が利用できない事態も起きた。
今回の事故を教訓にして、国は対策を強化する必要がある。自治体への一層の支援は欠かせない。
劣化予測や漏水検知に人工知能(AI)、人工衛星を活用するなど新手法の導入も急がれる。
道路の陥没は22年度に全国で1万548件あり、うち1386件は下水道設備が原因だった。
本県では、下水道設備の老朽化による道路陥没が21~23年度に265件あったという。最近では昨年11月に新潟市北区の市道で発生している。
下水道だけでなく道路や橋、トンネルなどあらゆるインフラの老朽化が進んでいる。
何より優先されなければならないのは日々の暮らしの安全・安心だ。県内自治体も各インフラの維持管理に一層力を入れてほしい。