ガソリンも野菜もコメも…。日々の暮らしを物価高が直撃する中で、今年の春闘が本格化した。賃上げへの大きな潮流を生み出す全国的な共同戦線に期待したい
▼既に初任給の大幅な引き上げを決めた大企業もある。好循環につながればいいが、春闘は雇用全体の約7割を占める中小企業のほか非正規雇用者への対応を本丸に据えたい
▼とはいっても、春闘を自分事だと捉えている人がどれほどいるかと考えてしまう。働く人が労働組合に加入する割合を示す組合組織率は昨年、過去最低の推定16・1%だった。労組の存在意義を共有する土台が失われつつあるのではないか
▼そんな中で目を引くトピックがあった。人気タレントの女性トラブルを巡って大揺れのフジテレビで、会社の労組に加入する人が激増した。1000人を超える社員のうち、80人ほどだった組合員が、あっという間に500人を超えたという
▼多くの企業がCM放送の差し替えに踏み切り、会社存続の危機を肌で感じたのだろう。概して高給だとされることなどから、これまで組合加入は低調だったようだ。現金なものだと少し鼻白みもするが、働く仲間が結束する意味を改めて考えさせられた
▼労組は経済闘争のためだけに存在するわけではない。会社が健全な経営をしているかチェックする機能も有する。「天皇」とも「独裁者」とも称される人物が鎮座する会社の立て直しに、小さな力を寄せ合う労組が役割を果たした-。次はそんなニュースに触れてもみたい。