書風の変遷 鍛錬物語る
會津八一(1881〜1956年)の人物像を昔の有名な映画のセリフに当てはめると、「ある時は奈良を愛した歌人、ある時は個性豊かな書家、ある時は実物と文献の両方を重んじた美術史学者、またある時は熱血教師。しかしてその実体は、学問を追究し、広く芸術を愛好した文人だ」といえそうだ。
当館は2018年度から不定期で、八一を初めて知る人に向けた企画展「八一を知る、八一がわかる」を開催し、八一の多面的な業績を分野ごとに紹介してきた。今回は八一芸術の要となる〈書〉が主題である。
左利きだった八一は、少年時代から利き腕ではない右手で手本通りに文字を書くことができなかった。ところが、17歳の時に俳句を始めてから...
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