中長期的スパンで、加速する人口減少を緩和させたいとの意欲がうかがえる予算案だ。「選ばれる新潟」の実現には、官民による積極的な取り組みが欠かせない。

 花角英世知事は12日、2025年度県当初予算案を発表した。一般会計は1兆2635億円で、24年度当初に比べて237億円、1・8%の減額となった。

 公約の「住んでよし、訪れてよしの新潟県」の実現に向けて、予算案の柱には「子育てに優しい社会の実現」「持続可能で暮らしやすい地域社会の構築」「高い付加価値を創出する産業構造への転換」など六つを据えた。

 予算案は、25年度からを期間とする「県総合計画」を踏まえたものだ。計画は人口減少が続くことを前提とした上で、達成目標を「32年に総人口194万人を上回る」としている。

 知事は「人口を増やすことはなかなか難しいという現実を踏まえながら、少ない人口でも活力を維持できる、そうした社会を目指さなければならない」と述べた。

 国内外の人や企業に選ばれる新潟をどう築くか。ハードルは高いが着実に取り組まねばならない。

 子育て関連事業で目玉となるのは、共働き家庭などを支援する放課後児童クラブのサービス拡充に向けた市町村への交付金創設だ。利用料の負担軽減や開所時間延長など地域の実情に沿い、男女共に活躍できる環境を整えてほしい。

 地域で安心して暮らすには、医療や交通の充実が不可欠だ。

 県内で11病院を運営するJA県厚生連の支援に県は約11億円を盛った。病院立地9市の計9億円を合わせ、厚生連の25年度の運転資金枯渇は回避できる見通しだが、危機は続く。

 県立病院を含む全県的な医療再編論議を深めてもらいたい。

 市町村などが取り組むライドシェアの導入も支援する。交通空白地解消に少しでもつなげたい。

 意欲ある企業や人材がチャレンジできる環境づくりに乗り出す。

 県が10億円を出資し、県内金融機関と創設する官民連携ファンドでは、観光や自然エネルギー、医療といった民間長期プロジェクトを資金面で後押しし、地域経済活性化を目指す。県が出資することで信用を高める狙いがある。

 「公民協働」で、夢を現実化する推進力にしたい。

 東京電力柏崎刈羽原発の安全対策では、能登半島地震を教訓に、指定避難所の備蓄物資や備蓄倉庫の整備を支援する。

 国費による避難道路整備と合わせ、住民の不安を払拭するための施策をきちんと進めてほしい。

 県財政は依然厳しく、借金返済に当たる公債費の実負担は徐々に増え、31年にピークを迎える。

 引き続き財政健全化に向けて留意しながら、県民生活や県内経済の基盤を支えていく必要がある。