県民が再稼働の是非を考える上で大きな意味を持つ報告書だ。しかし、評価を避けたような項目が含まれ、どう解釈したらいいのか難しい。不安を残す内容だ。

 東京電力柏崎刈羽原発の安全対策を確認する県技術委員会は、東電福島第1原発事故を踏まえた柏崎刈羽原発の安全対策に関する報告書を花角英世知事に提出した。

 報告書は「格納容器の破損防止対策」など22項目を、東電や原子力規制委員会に対する質疑、現地視察などで確認し、18項目について「特に問題はない」とした。

 一方、東電が原発を運転する適格性、耐震評価、想定を超えた事象への対応、テロ対策の4項目で独自評価を避けた。「規制委の判断を否定するものではない」とし、明確な結論を欠く形になった。

 中でも東電の適格性は、不祥事やテロ対策上の不備などが見つかる度に問題視され、再稼働問題を考える焦点の一つになってきた。

 技術委の議論の過程でも、適格性を疑問視する意見があり、統一見解は得られなかった。

 規制委の判断と関連付ける結論になったのは、技術委として、規制委以上の確認を行う難しさを表しているのだろう。

 技術委の小原徹座長は、東電の適格性について、「(運転に関わる)『人』に関することで、今後、きちんとやるかを判断するのは難しい」と述べた。

 報告書について、県が県内市町村の実務担当者へ説明した際には、「疑義が残ったまま話が進んでいくと捉えられかねない」「明言を避けているように感じる」と不安視する意見が出た。

 適格性についても、県民にどう説明するのか問われたのに対し、県原子力安全対策課は「適格性があるかどうかは、県の立場では言い切れない」と回答した。

 これでは、住民と接する機会が多い市町村の担当者が困惑するのは当然だ。県民が共通認識を持ち、議論を深めていけるように、県には説明努力を求めたい。

 柏崎刈羽原発では、設置した衛星電話が4回も故障するなど、いまなおトラブルが続いている。作業中の人身事故も多い。

 そうした点が改善されなくては、依然として安全性への不安は拭えず、適格性に疑問が湧く。

 一方、規制委は、原発事故時の屋内退避の運用を見直し、3月に最終的な報告書をまとめる。

 しかし今月公表された報告書案では、事故と自然災害が重なる複合災害時の細かな対応方針は盛り込まれず、住民や自治体の不安に向き合っているとは言い難い。

 花角知事は、技術委の報告書をはじめ、再稼働問題の判断材料がそろうのを待ってきた。

 今後、各機関で議論されてきた報告書などが続々と示される。知事には、県民と議論を共有しながら検討を進めてもらいたい。