県内の人口が減る中、県都・新潟市が果たす役割は大きい。能登半島地震からの復旧・復興を進めながら、人口流出を食い止めるような活力あるまちづくりを着実に進展させてもらいたい。
新潟市は14日、2025年度当初予算案を発表した。一般会計の総額は4267億円となり、能登半島地震の復旧経費などで過去最大規模となった24年度当初予算をさらに82億円上回った。
復旧・復興を進めるとともに、「選ばれる都市」としてさらなる発展を目指すとの思いを込めた予算だという。中原八一市長は「復旧・復興を最優先し、明るく活力ある未来を実現する予算ができた」と強調した。
際立った「目玉」は少ないが、市民の暮らしや地域の活性化などに幅広く目配りした堅実な予算という印象だ。復旧・復興から発展へ、着実に歩んでほしい。
24年度と同様に、「安心・安全」「活力・交流」「子育て・教育」の三つに力点を置いた。
能登半島地震で被災した市民の生活再建支援に引き続き力を入れ、液状化被害を受けた住宅や宅地の復旧などを支援する。
地震から1年以上たってもなお困難に直面する被災者は多い。寄り添った対応をしてもらいたい。
市長肝いりのまちづくり関連事業「にいがた2km(にきろ)」にも引き続き注力し、24年度当初を上回る関連予算を計上した。
旧新潟三越跡地の再開発計画が遅れるなど古町地区の課題は多い。一方、手厚い助成と積極的な誘致活動により、リニューアルされた新潟駅の周辺には首都圏のIT関連企業などの進出が相次ぐ。
新たに取り組むのは、新潟大学や地元IT企業などとの「産学官共創」事業だ。デジタル技術を活用し、強みである食品産業の活性化を目指す。進出企業の参画も積極的に促し、IT産業が根付くよう取り組むことも期待したい。
インバウンド(訪日客)を含めた交流人口の拡大にも力を注ぎ、誘客活動を推進する。
近県の長野市や金沢市と比べて弱い分野だ。「佐渡島(さど)の金山」の世界文化遺産登録や「伝統的酒造り」の無形文化遺産登録を追い風に、反転攻勢に出てほしい。
子育て・教育関連では新たに、先進医療も含めた不妊治療費や新生児の聴覚検査費用を助成するほか、「ひとり親家庭サポーター」の配置を始める。
子育て支援は全国の自治体が積極的に取り組んでいる。人口減対策としても、若年層が暮らしやすい環境整備は欠かせない。
市は今回、基金に頼らない「収支均衡予算」を編成したとする。とはいえ、財政力指数が政令指定都市の中で最悪となるなど、財政状況は盤石とはいえない。
金利上昇局面にある中、緊張感のある財政運営が求められる。