侵略された国が和平交渉に参加しないのでは、侵略した側に有利な条件で停戦合意に至る可能性が高く、危惧される。全ての当事国を交えた協議となるよう、国際社会は粘り強く訴えてもらいたい。

 ロシアとウクライナの戦争終結に向けた和平交渉を巡り、ルビオ米国務長官とロシアのラブロフ外相らが18日、サウジアラビアの首都リヤドで協議に入った。

 これに先立つトランプ米大統領とロシアのプーチン大統領の電話会談で、米ロが直ちに交渉を始めることに合意していた。外相会談は米ロ首脳会談実現への地ならし的な位置付けとなる。

 理解し難いのは、交渉にウクライナが参加しないことだ。ルビオ氏は米テレビで、ウクライナが参加する段階ではないとした。

 ウクライナのゼレンスキー大統領が、「ウクライナ抜きのいかなる交渉も結果を生まない」とけん制したのは、当然だ。

 ウクライナ侵攻は24日で3年となる。死傷者は増え続け、戦況は膠着(こうちゃく)状態に陥っている。一日も早く戦闘を終わらせねばならないことは言うまでもない。

 しかし、トランプ氏はロシアへの肩入れが目立つ。ウクライナの頭越しで米ロだけの交渉となっては、ウクライナの意向が反映されない恐れがある。

 ウクライナがロシアの侵略を抑止するために不可欠だと訴える北大西洋条約機構(NATO)への加盟を、トランプ氏はこれまで「現実的でない」とし、クリミア半島を含む全領土回復についても否定的な考えを示している。

 欧州諸国は侵攻以来、ウクライナを支援し、ウクライナと欧州はいかなる交渉にも参加しなければならないとしているものの、米のウクライナ・ロシア担当特使は、交渉の場に欧州の席は「ない」と明言した。

 欧州の安全保障にも影響は大きく、スターマー英首相は「ウクライナの将来は欧州の存亡に関わる問題」とし、交渉には欧州も加わるべきだとした。

 米とウクライナの信頼関係や、西側諸国の結束に亀裂が生じた格好となり、プーチン氏にとっては好ましい事態といえる。

 ロシア国内では昨年後半からインフレや通貨安が進み、国民生活に影を落としている。交渉は渡りに船の展開だろう。

 日本の岩屋毅外相はミュンヘン安全保障会議で「ロシアが勝者になる終わり方であってはならない」と訴えた。

 武力で他国の領土を侵害することは国際法への明白な違反で、絶対に認められることではない。これを認めた終戦なら、国際秩序は崩壊し、日本の安全保障にも波及しかねない。

 侵略行為を二度と起こさせないためにも、ウクライナを中心にした和平を実現させねばならない。