火の勢いが収まらず、不安が増すばかりだ。避難を余儀なくされた人も多く出ている。被害がこれ以上広がらぬよう、国や自治体は延焼を食い止め、一刻も早い鎮火に全力を挙げてもらいたい。

 岩手県大船渡市で山林火災が発生し、5日で1週間となった。

 焼失面積は4日時点で約2600ヘクタールと、平成以降で国内最大となった。建物の被害は少なくとも84棟に上っており、新たに複数の住宅が燃えているのも確認されている。被害は甚大だ。

 避難指示は1896世帯4596人に及んでいる。市内12カ所の避難所のほか親戚の家や車中に避難している人もいる。避難者の総数は市の人口の1割を超えた。

 わが家がどうなっているのか心配している人も多いことだろう。寒い日が続く中、避難は長期化する見通しだ。自治体や関係機関は、避難者の生活支援や心身のケアなどに努めてほしい。

 大船渡は2011年の東日本大震災で津波に襲われた。避難者の中には、津波で家を失い、内陸部に引っ越して再び自宅を追われる事態になった人もいる。その心中を思うと、やりきれない。

 受験を目前に控えた子どもたちには影響が出ないよう、きめ細かな配慮も必要だ。

 問題は、山火事はいったん発生すると鎮圧が困難であることだ。

 1月に発生した米ロサンゼルスの山火事や、21年の栃木県足利市のケースでは鎮圧までに3週間以上を要した。

 山火事は地上から消防隊が入りにくく、使える水も限られ、平野と比べ消火活動が難しい。ヘリコプターによる放水は天候に左右され、へリが飛べない時もある。

 大船渡には自衛隊のヘリのほか、本県を含む14都道県の緊急消防援助隊が駆けつけているが、消火作業は困難を極めている。

 国は自治体と連携し、早期鎮圧に力を尽くさねばならない。

 総務省消防庁によると、林野火災は例年2~4月に集中する。強風と空気が乾燥している中での野焼きなどが原因とみられる。

 気象庁によると、5日の大船渡は雪または雨が降る予報だが、東北や東-西日本などの太平洋側では今冬の降水量が統計開始以降最少で、空気が乾燥している。

 岩手県では先月、大船渡や陸前高田市で山林火災が相次いだ。長野県や山梨県などでも起きた。

 消防庁のデータでは、23年の林野火災の出火原因として最も多いのはたき火の32%で、野焼きなどの火入れが続く。全体の約65%が人為的なものだという。

 本県の林野火災は雪が解けた4~5月に集中する。平地の田畑や河川敷でも枯れ草などの火災が多発しており、これからの時季は注意が必要だ。行楽などで入山する際にも、火の取り扱いには十分気を付けたい。