このままでは、将来世代が希望を失う恐れがある。そう認識し、男女格差の解消と意識改革を急がねばならない。
求められるのは、性別や生き方を問わず、誰もが活躍できる多様な社会の実現だ。
国連が8日を女性の権利向上を目指す「国際女性デー」と定めて50年となった。今年は日本が「世界の女性の憲法」と呼ばれる女性差別撤廃条約を批准して40年の年でもある。
◆働く現場の改善急務
各国がジェンダー平等を主要課題に据える中、日本は世界の潮流から取り残されている。
スイスのシンクタンク、世界経済フォーラムが報告した2024年版の男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告で、日本は146カ国中118位、先進7カ国(G7)で最下位だ。
中でも経済は120位、政治は113位と低い。女性リーダーが少ないことが要因にある。
女性が結婚や出産・育児経験のあるなしにかかわらず、能力を発揮できる社会にならない限り、改善は難しい。
会社や学校、地域や家庭の現状はどうか、改めて周囲に意識を向けたい。
研究者らでつくる「地域からジェンダー平等研究会」は、国際女性デーに合わせ、25年の「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」を4分野で公表した。
指数は「1」に近いほど平等であることを示し、本県では教育が0・557で最も高かったが、全国では44位に沈んだ。
経済0・430、行政0・282、政治0・239と、全分野で男女格差は大きい。
働く現場を見ると、本県は企業の女性管理職割合が全国ワーストだ。小中高校教頭の女性割合は44位、市町村の女性管理職割合は35位と低水準で、全体的に登用が進んでいない。
女性の登用は社会的責任としてだけ捉える消極的なトップは少なくない。だがグローバル化が進む経済社会で、偏った性別だけで重要な意思決定を行えば、ビジネスなどの機会喪失を招く恐れがある。
賃金格差の大きさも問題だ。日本では近年、男性の賃金に対する女性の賃金水準は7割台で推移しているが、スウェーデンは9割以上、フランス、ドイツ、英国、米国は8割以上だ。
背景には、女性の管理職比率の低さや勤続年数の短さがある。女性は非正規職員や一般職が多く、責任の重い仕事を任されていても、賃金ベースが低くなりがちなこともある。
解消には、仕事の負担やスキルで評価し、賃金に反映させる仕組みに変えることが必要だ。
政治に関しては、政党に候補者数の男女均等を促す「政治分野の男女共同参画推進法」が18年に成立した。とはいえ努力義務に過ぎず、効果は限定的だ。
男性と違う形で人生を経験する女性が政策議論に加われば、政治はより国民の実感に近づくはずである。女性議員を増やす取り組みを続けたい。
若い女性の地方から都市部への流出は社会問題になっている。就業先の選択肢の少なさや賃金水準の低さが原因とされるが理由はそれだけではない。
◆生きづらさの解消を
新潟日報など地方紙や専門紙の合同アンケートで、性別による偏見などを理由に女性の3割が「実際に地元を出た」「出たいと思ったことはあった」と答えたことは見過ごせない。本県では4割近くに上っている。
性別や経験、先入観に基づくアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)に苦しむ女性が多くいることを物語る数字だ。無意識の何げない言動が、女性の働きづらさや生きづらさの根源にあるのだろう。
性別役割分担意識が強く、家事や育児、介護の負担が女性に偏ったり、周囲が個人の人生に過剰に介入したりすることも、息苦しさを招いている。
そうした意識は男性の生きづらさにもつながるものだ。解消していかねばならない。
世界に目を転じれば、アフガニスタンでは復権したタリバン暫定政府が女性に対する抑圧的な政策を続けている。戦時下の国々では、数多くの女性が虐殺や性暴力にさらされている。
全ての女性の生命や財産、権利、機会が守られる世界でなくてはならない。日本も大きく一歩を踏み出したい。