アイヌが隠した金塊を巡る争奪戦を描いた、野田サトルさんの人気漫画「ゴールデンカムイ」が連載を終えた。本県出身という設定の主要キャラクターも複数いて、県内での人気も高かったはずだ

▼物語の舞台は明治末期。登場するアイヌは誇り高く、自然の中で暮らすことにかけては和人を圧倒する。彼らの文化や習俗も丁寧に描き、専門家からも評価された。日本とロシアのはざまで苦悩する、アイヌら北方の少数民族の姿も浮き彫りにした

▼アイヌと同様に沖縄の人々も独自の習慣や文化を有する。本紙で「ウチナー評論」を連載する作家の佐藤優さんは父が東京出身、母が沖縄の久米島出身で「日本人と沖縄人の複合アイデンティティーを持つ」と記す

▼ただ、基地問題のように日本と沖縄の利益が対立する場合は「躊躇(ちゅうちょ)なく沖縄人を選択する」と断言する。以前のコラムには沖縄人としての複雑な思いを書いていた。大田昌秀元沖縄県知事の県民葬を迷った末に欠席したという

▼中央政府の幹部が遺影の前で「あなたの遺志を受け基地負担軽減に努力する」と話すことが予想された。欠席を決めたのはそんな表面だけの言葉に我慢できず、不規則発言をしてしまうことを恐れたからだとした

▼アイヌや沖縄人のように少数派として日本で暮らす人々がいる。そうした人々の思いを日本人は深いところでは理解できない、と佐藤さんは指摘する。私たちは少数派のことを何も知らない-こう考えることから始める必要があるのだろうか。

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