本紙でエッセー「『生きづらさ』を生きる」を連載している作家の雨宮処凛さんは1975年の生まれ。自分たち世代の特徴を著書に記している

▼「確かに子どもの頃、『未来は明るい』ことは漠然と信じられていた」「しかし、自分たちが社会に出る頃になって、『今までのことはバブル崩壊によって全部噓(うそ)になりました』と梯子(はしご)を外された世代」(「ロスジェネはこう生きてきた」)

▼ロスジェネは「失われた世代」を意味する「ロストジェネレーション」の略。バブル崩壊後の景気低迷期に社会へと踏み出したが、就職難など数々の困難に直面した。「就職氷河期世代」と言い換えることもできる

▼今では40~50歳代になっているが、政府は不本意ながら非正規雇用で働いたり、無職が続いたりして支援が必要な人は約100万人に上るとみている。正規雇用の場合も、人材確保に向けた初任給の引き上げなど若手が重視される一方で、氷河期世代の処遇改善はなかなか進まないと指摘される

▼昭和世代の理不尽な要求にも耐えてきたけれど、近頃は若手が離職しないよう多少のことには目をつぶれと言われる。新人の給料は上がるのに、自分たちは…。氷河期世代からはこんな恨み節が聞こえてくる

▼氷河期世代やロスジェネは日本社会の不条理を押しつけられてきた。ことしの春闘では、この世代の処遇改善が課題とされる。本来なら社会の中核を担う世代だ。そんな人々が力を発揮できない社会や組織が衰えていくのは間違いない。

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