とあるオフィスの昼下がり。部下の机に見覚えのある缶があった。時折グビグビやっている。うまそうに飲む。会社で昼ビールだ。「良くないのでは」。忠告すると当人は平然と答えた。「ノンアルです」

▼何だノンアルコールビールか。いや待てよ。戸惑っていると、当人は続けた。「ただの清涼飲料水です。しかもカロリー、糖質、プリン体がゼロ。健康飲料です」

▼職場でのノンアルは是か非か。周囲の見解は分かれた。容認派は「酔わないから問題ない」「お茶と同じ」と言い、否定派は「誤解を招く」「微量のアルコールが含まれる商品もある」と訴える

▼頭をよぎったのは「コンプライアンス」だ。「法令順守」と訳されることが多いが、広くルールや道徳を守るといった意味がある。社会のコンプライアンス意識が高まる中で、果たして職場ノンアルの是非は

▼ただこの意識、最近は弊害も言われる。「コンプライアンスのやりすぎが会社を滅ぼす」「社会を破滅させる過剰コンプライアンス」。ネット上ではそんな記事が目に付く。管理強化、ルール至上主義が人を萎縮させてチャレンジ精神をそぎ、組織の弱体化を招くと警鐘を鳴らす

▼失敗しない唯一の方法は、何もしないこと-。誰かの言葉を地でいくような人が増えてしまう。大事なのは過剰や過度にならないこと。バランスや寛容の心を忘れたくない。きょうは大型連休のはざまの平日。改めて職場ノンアルは許されるか考えてみる。難問だ。皆さんはどうお考えか。

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