開幕まで1カ月を切ったが、機運は高まっていない。入場券販売は低調で、パビリオン建設も遅れている。残された時間は少ないが、関係機関は山積する課題の解決へ全力を尽くさねばならない。
大阪・関西万博は大阪市で4月13日に開幕する。10月13日まで約160の国・地域のほか、企業や文化人らがパビリオンを出展し、文化や最新技術を披露する。
会場のシンボルとなる巨大木造屋根「リング」は完成した一方で、「万博の華」と呼ばれる海外パビリオンの準備は遅れている。
自前で建設する「タイプA」は47カ国のうち工事完了が今月4日時点で2割弱にとどまっている。開幕に間に合わないパビリオンが相次ぐのは避けられない状況だ。
施工業者との契約難航などによる着工遅れが要因だ。完成した姿で来場者を迎えられるように、安全に十分配慮し、大詰めの整備を進めてもらいたい。
国家的イベントにもかかわらず、ムードは高まっていない。どんなパビリオンがあるのかもよく知らないという人は多いはずだ。
大阪府などが2024年12月に行った全国調査では、どちらかといえばを含め「行きたい」は34・9%で目標の50%を下回った。
背景にはパビリオン建設の遅れのほか、会場整備費が2度にわたり上振れするなど、負のイメージが重なったこともある。
前売り入場券の販売目標は1400万枚だが、修学旅行などの販売見込み数を加えても今月17日時点で1021万枚にとどまる。
要因として、購入手続きが複雑なことが挙げられる。
会場の夢洲(ゆめしま)への交通手段が限られていることもあって予約制を導入し「並ばない万博」を掲げた。
だが原則、スマートフォンやパソコンでIDを取得した上で電子チケットを購入しなくてはならず、来場日時や観覧したいパビリオンの事前予約も必要だ。
手続きが煩わしくては、気軽に行くことをためらう人が多くても不思議はない。
政府は経済波及効果を計2兆9155億円と見込み、国内産業の活性化につながると強調する。ただ、前提とした来場者数は2820万人で、このままでは到達するかは見通せない。
販売低迷を受け、政府は仕組みを一部見直して、インターネットでの事前購入が不要な当日券も会場ゲート前で販売することを決めた。ネットが苦手な人向けに、コンビニなどで販売する紙チケットも登場した。
手続きの簡略化など、より幅広い層が来場しやすくなるための工夫を重ねてもらいたい。
今回のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。どんな展示があり、どんな体験ができるかといった魅力を、具体的に発信していくことも求められる。