極めて異例の事態が半年で繰り返されたことを重く受け止めなくてはならない。原因を徹底的に究明し、恒久的な再発防止策を講じる必要がある。
東北新幹線で今月、時速約60キロで走行していたはやぶさ・こまちの連結が外れ、自動停止するトラブルが発生した。車両は分離して停止し、けが人はいなかった。
とはいえ、一歩間違えれば惨事となり得る深刻な事態だ。
JR東日本は、こまちの電気系統に不具合が起き、連結器が誤作動した可能性があるとみている。
分離操作に関わる機器を固定する応急対策で安全性を確保できるとし、トラブル発生から1週間余りで連結運転を再開した。
しかし、根本的な原因が特定されず、恒久対策が施されない状態での再開には懸念が残る。昨年9月にも同様のトラブルが起きているからだ。
前回は時速315キロで走行していたはやぶさ・こまちの連結が外れて分離した。JR東は連結器を分離させる使用頻度の低いスイッチに金属片が触れ、電気回路がショートして誤作動したとする調査結果をまとめた。
スイッチの配線を外して無効化する暫定対策をした上で、連結器を分離させる回路を走行中に作動させない恒久対策にも取り組むとしていた。
だが恒久対策が実現していない段階でトラブルが再発した。
今回は運転席にあるレバーを金具で固定する対策で誤作動を防ぐとしているが、原因が電子回路の問題ならば、電磁波や太陽活動などの要因も考えられると指摘する識者もいる。
前回の分析を再検討することも含め、根本的な原因を究明することが求められる。
今回のトラブルを受け、国土交通省は事故が発生する可能性がある「重大インシデント」に認定し、運輸安全委員会が調査に入った。前回は自動ブレーキの作動で停止したとして対象としなかった。
ただ、これについては前回から安全委が調査をしていれば、再発を防げた可能性があるとの見方もある。重大な事故を起こしてからでは取り返しがつかない。監督官庁は責任の重さを自覚して調査に全力を尽くしてほしい。
新幹線を巡っては、ほかにも各地で終日運休につながるようなトラブルが続発している。
昨年は1月に東北新幹線で架線を張る重りの部品が破損して停電した。7月には東海道新幹線で保守用車両同士が衝突、脱線した。
JR各社は、人手不足を補うため自動運転にも力を入れており、上越新幹線など各地の新幹線で導入が進む見込みだが、こうした新技術も安全が大前提となる。
まずは今ある新幹線に恒久的な安全対策を講じ、信頼性の向上を図らねばならない。