「違法」な行為だと烙印(らくいん)を押された現実を直視すべきだ。知事は開き直るのではなく、報告書を受け止め、混乱した県政の正常化を図らねばならない。

 斎藤元彦兵庫県知事の疑惑告発文書問題で、疑惑を検証した弁護士でつくる第三者委員会が、調査報告書を公表した。

 報告書は、文書を公益通報と扱わずに告発した元県幹部の男性を懲戒処分にしたのは「明らかに違法」で処分は無効だとした。

 机をたたくなどして職員を𠮟責(しっせき)した行為や深夜にチャットで指示を出したことなど、調査対象となった16件のうち10件をパワハラだと認定した。

 これとは別に昨年3月の記者会見で元幹部を「うそ八百」などと非難したのも、精神的苦痛を与え、パワハラに該当するとした。

 報告書を受けて斎藤知事は26日に記者会見し、認定された𠮟責行為をパワハラだと初めて認めた。「真摯(しんし)に受け止める。職員を不快にさせ、負担をかけたことを謝罪する」と述べた。

 第三者委に先立ち、県議会調査特別委員会(百条委)が「パワハラといっても過言ではない不適切なもの」とする報告書をまとめた際には、知事は「パワハラかどうかは司法の場で判断される」と述べていた。

 従来の主張からは変化したとはいえ、謝罪は当然であり、遅すぎるくらいだ。

 しかし、法律の専門家からなる第三者委の厳しい報告書で追い込まれ、やむを得ず対応しただけではないかとの疑念が浮かぶ。

 パワハラ以外では、第三者委の認定に反論する主張が目立っていたからだ。

 告発文書を出した元県幹部への懲戒処分を「違法」とした第三者委の指摘に対し、知事は「専門家も意見が分かれる」と述べた。

 告発文書については「誹謗(ひぼう)中傷性が高いとの認識に変わりはない。当時の判断としてはやむを得ない適切な対応だった」とし、処分の撤回を否定した。

 第三者委報告書は百条委報告書より踏み込んだ形だが、知事の受け止めが変化したようには見えない。自身の処分について問われても明言しなかった。

 県民に尊敬される態度が求められる行政トップとして、まずは両委の報告書で違法性や違法可能性を指摘されたという事実と真摯に向き合い、率直に謝る姿勢が大事なのではないか。

 昨年11月の出直し知事選で再選し、民意を得たことを正統性の根拠と考えているのだとしたら、対応を見誤る。

 知事に求められるのは、一刻も早く混乱を収束させ、県政運営を正しい軌道に戻すことだ。

 県政は県民の利益のためにある。知事はこのことを十分に認識し、事態を打開してもらいたい。