直接請求の重みをしっかりと受け止めてもらいたい。知事と議会には真摯(しんし)な議論が求められる。

 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を巡り、市民団体「柏崎刈羽原発再稼働の是非を県民投票で決める会」が、14万3196人分の有効署名を提出し、県民投票条例の制定を直接請求した。

 署名は法定数の約3万6千人分を上回り、県が28日に受理した。

 国が求める柏崎刈羽原発の再稼働では、地元同意が焦点で、花角英世知事は是非を判断する際「県民の信を問う」としている。

 「決める会」は、知事が再稼働の是非を判断する際に県民の意思を的確に反映させることを県民投票の目的とする。投票期日は「知事が判断するまでの期間において、知事が定める」としている。

 直接請求の受理を受け、知事は意見を付けて県議会に条例案を提出する。4月16日にも招集される見通しの臨時会で審議され、可決されれば条例が制定される。

 同様の直接請求は2012年にもあった。当時の泉田裕彦知事が投票方式の不備を指摘し、修正した上で実施すべきだとしたが、県議会が翌年否決した経緯がある。

 今回の直接請求の動きについて、花角知事はかねて「国が明確に地元に(再稼働の)判断を求めてきている点で(前回と)状況は違う」と指摘していた。

 28日は「決める会」と面会し、請求代表者の水内基成弁護士が「前向きな意見を付けて県議会に諮ってほしい」と訴えたのに対し、知事は「思いを受け止め、私なりに考えをまとめたい」と述べた。

 臨時会までに公表される見通しの知事の付帯意見の内容が注目される。知事には県民に向けた丁寧な説明を求めたい。

 県民投票は県民の意思を把握しやすい仕組みではある。一方で慎重な対応が必要だとする意見があることも確かだ。

 再稼働を推進する柏崎市の経済団体「柏崎エネルギーフォーラム」は「国の重要政策を県民投票で判断するのはなじまない」とし、再稼働の是非は県民の代表である県議会が判断すべきだと訴える。

 28日には幹部らが知事に要望書を手渡した。

 知事と同様に、県議会にも重い責任が課せられている。知事の付帯意見を踏まえて対応を検討するという会派もあるが、県議の一人一人が考えを深め、この問題にきちんと向き合うことが不可欠だ。

 県民投票という手法には、県内の首長にも温度差がある。

 柏崎市の桜井雅浩市長は「原発は国全体の問題だ」と否定的だ。長岡市の磯田達伸市長は「有力な選択肢の一つだ」とし、新潟市の中原八一市長は「知事が判断する材料の一つになりうる」とする。

 立地地域の思い、そして県全体の思いをどうくみ取るのか。知事と県議会の熟議が欠かせない。