少数与党の厳しい現実を映し出す異例の審議となった。与野党が議論し、より良い政策に修正することは意義がある。与野党は、合意形成の過程が見える、開かれた協議を心がけねばならない。
2025年度予算が31日、成立した。歳出総額は115兆円を超え、過去最大となる。
政府が通常国会召集日に提出した予算案は、与野党協議を通じて衆参で2度の修正が加えられた。
衆院を通過した予算案が参院で修正され、衆院の同意を得て成立したのは現憲法下で初めてだ。当初予算案が修正されるのも1996年以来29年ぶり、減額修正は55年以来70年ぶりとなる。
修正は、ひとえに石破政権が少数与党で、予算成立に野党の協力が不可欠なことが大きい。
与党と日本維新の会が合意した高校授業料の無償化や、所得税が生じる「年収103万円の壁」見直しに伴う修正が行われ、予算案は3月4日に衆院を通過した。
ただ、与党と野党が個別に協議を進めたため、政策決定過程に不透明さが漂ったことは否めない。実質的な政策論議が後回しになった印象もある。開かれた与野党協議に向けて改善が必要だ。
審議が混迷した一因が、石破茂首相自身の言動にあったことも指摘しなければならない。
高額療養費制度の自己負担額の上限引き上げを巡り、首相が全面凍結を表明したのは参院審議の開始後で、与党は再修正案の提出を余儀なくされた。
引き上げは患者負担が大きいなどとして、衆院審議の中でも立憲民主党が凍結を求めていた。
批判の高まりを受け、首相が「私の判断が間違いだった」と陳謝し、凍結を表明したのは、予算案の衆院通過3日後だ。なぜもっと早く、判断できなかったのか。
参院審議中の3月中旬には、首相が自民党衆院1期生15人との会合で1人10万円の商品券を配った問題が発覚した。
首相は商品券配布を「政治目的ではない。全て私費だ」と重ねて主張しているが、「政治とカネ」の問題は今国会の焦点であり、首相の認識を疑わざるを得ない。
予算審議中にもかかわらず、予算成立後に強力な物価高対策を検討する意向を公明党側に伝えた言動も、軽率だった。
一方、野党各党は予算での公約実現を主張し、手柄争いの様相を呈した。立民、維新、国民民主党が独自色を発揮しようと試みたことで、野党が一体感を欠く形となったことは気がかりだ。
後半国会には、期限の3月末までに結論を得られなかった企業・団体献金の扱いや選択的夫婦別姓など重要課題が待ち受ける。
衆院では過半数となる野党が協調することも、政策を動かす上で重要だ。野党も大局に立ち、責任ある対応に努めてもらいたい。