日本の大動脈をまひさせ、流通や旅行をはじめとする国民生活を著しく混乱させた責任は重い。深刻なトラブルといえる。
高速道路の利用者が増える大型連休が月末に迫っている。事業者は原因を徹底究明し、再発防止策を講じてもらいたい。
中日本高速道路が管轄する東名高速道路や中央自動車道などの自動料金収受システム(ETC)で障害が発生し、一部の料金所でETC専用レーンが閉鎖された。
6日は東京、神奈川、山梨、岐阜、静岡、愛知、三重の7都県の料金所で正常な課金ができず、ETCレーンの発進制御バーが開かなくなった。7日には長野県でも利用できなくなり、トラブルは8都県に拡大した。
発生から38時間を経た7日午後2時に応急復旧が完了したものの、同社管内23路線のうち、最大17路線106カ所に影響した。
2005年の道路公団民営化以降、ETCの大規模なシステムトラブルは同社管内では初めてだ。
料金所をスムーズに通過できなくなり、各地で渋滞が発生したほか、衝突事故も相次いだ。約5時間遅れた高速バスもあった。予定の変更を余儀なくされた利用者から「大迷惑だ」と批判の声が上がったのは当然だろう。
残念だったのは、高速道路会社の対応が後手に回ったことだ。
障害発生後は、料金所の係員が一般レーンで対応したものの追い付かず、渋滞を招いた。
利用者に後で料金を精算してもらう異例の措置を取って専用レーンを開放し、渋滞は徐々に解消したとはいえ、開放までに12時間以上もかかっている。
状況を踏まえれば、もっと早い判断が必要ではなかったか。
後で精算することになった通行料金の支払い手続きには戸惑う声もある。ホームページをはじめさまざまな方法で、分かりやすく説明してもらいたい。
トラブルの詳しい原因が分からなかったことも、復旧に長時間を要することにつながった。
高速道路会社は当初、7月に実施予定の深夜料金の見直しに伴うシステムの改造作業が影響した可能性があるとしていたが、無関係だったと明らかにした。
ETCに関するシステムの一部でプログラムに問題が生じたとみられるという。
高速道路料金は割引制度を見直す度に改修を重ねてきたことで、システムが複雑化しているとも指摘される。改めてシステム全般を点検する必要があるだろう。
ETCは、国による補助制度や料金割引などを後押しに浸透し、普及率は今年1月時点で95・3%に上っている。
大半の車両が利用するだけに、ひとたび障害が発生すれば甚大な影響があることを、事業者は肝に銘じなくてはならない。