理不尽な要求に屈しては国内経済を守ることはできない。日本政府は弱腰になることなく、粘り強く交渉してもらいたい。

 米政権の相互関税導入を巡り、石破茂首相は7日夜、トランプ米大統領と電話会談した。

 日本は5年連続で最大の対米投資国であるとして、投資力の減退を招きかねない関税措置の見直しを求めた。

 トランプ氏との直接交渉に乗り出したものの、9日に始まる関税率上乗せを翻意させることはできず、成果は得られなかった。

 トランプ政権による各国への関税強化策が世界の株式市場を混乱させていることは間違いない。

 日経平均株価は7日に史上3番目の下げ幅を記録し、節目の3万1000円を割り込んだ。翌8日は急反発して3万3000円台に戻し、終値の上げ幅としては過去4番目となった。

 ニューヨーク市場も7日、ダウ工業株30種平均が昨年5月以来、約11カ月ぶりの安値水準で取引を終えた。世界経済の悪化を懸念した売り注文と関税発動の延期を期待した買いが交錯した。

 金融市場の混乱を踏まえトランプ氏は、交流サイト(SNS)に「弱気になるな。忍耐強くあれ」と投稿した。あまりに強硬で、かたくなだ。

 電話会談後にはSNSで「貿易に関して米国をひどく扱ってきた」と日本などを非難し、農業と自動車を例に挙げた。

 日本が輸入米に700%の高関税率を課していると批判するが、実際は200%程度とみられる。

 自動車に関しては林芳正官房長官が8日、「国連で策定された基準や認証手続きを採用している」と正当性を強調した。

 政府は事実をつまびらかにし、一つ一つ反証してもらいたい。

 関税の適用除外を求めていくため、首相は米側との交渉窓口となる閣僚として赤沢亮正経済再生担当相を指名した。

 赤沢氏は首相の最側近である。経済政策だけでなく防災庁設置の旗振り役も担う。赤沢氏一人に任せ切ることなく、石破政権の総力を挙げた取り組みが不可欠だ。

 国内産業の支援も欠かせない。財務省と金融庁はそれぞれ事業者の資金繰りなどを支える対策本部を設置する。

 影響を受ける企業や生産者らから必要な策を聞き取り、早急な支援につなげたい。

 首相は関税措置に対して国会答弁で「極めて不本意だ」と述べたが、これまでの両国間の信頼関係に基づけば、米国にもっと強いメッセージを発信すべきである。米国を公正な貿易の場に引き戻さなければならないからだ。

 世界経済の先行きは見通せない。国内の不安を広げぬよう、政府は厳然とした姿勢をトランプ氏に示さなければならない。