主食であるにもかかわらず十分な政策を講じてこなかったツケが回ってきたのではないか。消費者、生産者それぞれにとっての適正な価格を見いだしたい。

 コメ5キロ当たりの平均価格が、データの集計を始めた2022年3月以降の最高値を更新した。

 農林水産省によると、全国のスーパーで3月24~30日に販売された5キロの平均価格が前年同期の2倍超に当たる4206円だった。13週連続の値上がりだ。

 3月下旬から政府備蓄米が店頭に並び始め、備蓄米は平均より1~2割安い3500円程度の値が付くが、通常のコメは値下がりに至っていない。

 日々の食卓に欠かせない主食だ。前年比2倍超の価格は重い。

 供給量を増やすことで価格を下げようと政府は、備蓄米をこれまで2回にわたり計21万2千トン放出してきた。

 この放出量について江藤拓農相は「インパクトがない数字を出しても仕方ない」と語っていた。だが価格は高止まりしている。見通しの甘さに懸念を抱く。

 政府は備蓄米10万トンを追加放出する入札を4月下旬に実施することと、7月ごろまで毎月放出することを新たに発表した。

 しかし細切れの備蓄米放出を重ねるだけでは、打開策として限界があるのではないか。

 昨夏の品薄が「令和の米騒動」を招いた。高値の背景には、再来を警戒する事業者や消費者の防衛心理があるとされる。

 必要な量が安定的に出回るような体制にしなければ、コメ流通への信頼さえも揺らぐことになる。

 日本のコメ政策はこれまで、作り過ぎによる値崩れが起きないようにしてきた。需要に対しギリギリの生産量であったことが、今回の事態を引き起こしていると指摘する専門家もいる。

 11日に政府はコメ輸出を大幅に拡大する方針を閣議決定した。

 コメ余りの懸念から生産を抑制してきた農政から転換するが、生産意欲が高まらなければ実現はかなわない。意欲が高まるよう農業経営を安定させる仕組みを考えていくことが求められる。

 インバウンド(訪日客)の増加による需要拡大や、気候変動による収量減といった変化にも対応していく必要がある。

 主産県である本県が、時代に合った政策への転換を主導していけないだろうか。

 トランプ米政権が関税政策によって各国を混乱させる中、米国は農産物の市場開放を日本と協議する意向を示している。

 コメの輸入枠が焦点だと言われる。国産米価格の高止まりが長引き、輸入米への依存につながることを危惧する。

 食料安全保障に関わる問題だ。時代に合った確たる農政を整えなければならない。